判旨
第三者の所有物を没収するには、当該第三者が犯罪行為の用に供されることをあらかじめ知っており、かつ犯罪時から引き続き当該物件を所有していることが必要である。
問題の所在(論点)
被告人以外の第三者が所有する物件を、当時の関税法83条1項(現行の刑法19条、関税法118条1項参照)に基づき没収するための要件が問題となる。
規範
関税法所定の貨物または船舶が犯人以外の第三者の所有に属する場合、当該物件を没収するためには、①所有者たる第三者において、その犯罪行為が行われること(または用に供されること)をあらかじめ知っており、かつ②犯罪が行われた時から引き続き当該物件を所有している場合に限られる。
重要事実
被告人ら8名は、貨物を沖縄へ不法輸出する目的で船舶「H丸」及びその附属具を用いて実行に着手したが、発覚し検挙された(関税法違反被告事件)。原審は、当該船舶及び附属具を没収する旨の言い渡しをしたが、記録によればこれらは第三者「I」の所有に属することがうかがわれた。しかし、原審は所有者Iが当該船舶を犯罪に供されることを事前に知っていたか(知情の有無)について何ら審理・判断を行っていなかった。
あてはめ
本件において、没収の対象となった船舶H丸等が第三者の所有物である可能性がある以上、没収が許されるためには、所有者が犯罪の計画を事前に認識していたという「知情」の事実が必要である。しかるに、原判決はこの知情の事実を確定しないまま没収を命じており、同条の解釈を誤った違法、または審理不尽の違法があるといえる。
結論
第三者所有物の没収には所有者の知情が必要である。これを確認せずに没収を命じた原判決には法令解釈の誤りまたは審理不尽があるため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
本判決は第三者所有物没収の憲法的な限界(適正手続)を背景とした判断であり、刑事訴訟法上の第三者没収手続(特例法)の解釈指針となる。答案上は、没収の要件を検討する際、特に第三者所有物件については「知情」の有無を必ず要件として挙げるべきである。
事件番号: 昭和26(あ)1897 / 裁判年月日: 昭和32年11月27日 / 結論: 破棄差戻
一 所論は原審において主張判断を経ない事項であるから、上告適法の理由とならない。 二 (所論の要旨)原判決の支持する第一審判決によれば「関税法第八三条第一項により主文第二項記載の物件を没収する」と摘示しており、右物件中にはAが包含せられている。これによつてこれを見れば、右法条中犯人の占有に係るものとして、右船舶を没収し…
事件番号: 昭和29(あ)2757 / 裁判年月日: 昭和33年2月13日 / 結論: 棄却
犯人が旧関税法の密輸出行為の用に供した第三者所有の船舶については、所有者がその占有を犯人に移す際、それが密輸出の用に供せられることの事情につき善意であつたときは、旧関税法第八三条第一項により没収するをえないものである。