一 原判決前文に「当裁判所は検事今井和夫関与の上左の通り審理判決する」旨の記載あること所論のとおりであるが、その趣旨は原裁判所は右検察官の公判廷出席の下に審理しこれに基いて主文のとおり判決するというにあつて、検察官関与の下に合議した趣旨でないことを多言を要しない 二 旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第八三条、第二項にいう「犯人以外ノ者前項ノ物ヲ取得シタル場合」の「取得」とは、所有権の取得をいうのであつて占有権の取得を意味しない 三 犯人が旧関税法の密輸入行為の用に供した第三者所有の船舶については、所有者がその占有を犯人に移す際、それが密輸入の用に供せられることの事情につき善意であつたときは、それにつき過失があり、且つ事後返還を受けた際善意であつたことが認められないときにおいても、旧関税法第八三条第一項、第二項によつて没収することはできない
一 判決前文に「当裁判所は検事某関与の上左の通り審理判決する」旨の記載の趣旨 二 旧関税法第八三条第二項にいう「取得」の意義 三 旧関税法第八三条第一、二項による船舶の没収が違法な事例
刑訴規則56条,旧関税法(明治32年法律61号―昭和23年法律107号により改正のもの)83条1項,旧関税法(明治32年法律61号―昭和23年法律107号により改正のもの)83条2項,旧関税法(明治32年法律61号―昭和23年法律107号により改正のもの)76条,関税法(昭和29年法律61号)118条1項
判旨
第三者所有の物件を没収するには、所有者が犯罪に供されることをあらかじめ知っていた場合に限られる。また、関税法上の「取得」は所有権の取得を指し、占有の回復はこれに含まれない。
問題の所在(論点)
1. 第三者の所有物件を没収するための要件(悪意の必要性)。 2. 関税法83条2項(犯人以外の者が取得した物件の没収)にいう「取得」に、賃貸借終了による占有の回復が含まれるか。
規範
1. 第三者所有の物件の没収は、当該第三者が、その物件が犯罪行為の用に供されることをあらかじめ知っており、かつ犯罪時から引き続き所有している場合に限り許容される。これを超えて善意の第三者の所有物を没収することは、必要の限度を超えた財産権の侵害として憲法29条に違反する。 2. 関税法83条2項にいう「取得」とは、所有権の取得を意味し、単なる占有権の取得(返還による占有の回復等)は含まれない。
重要事実
船舶(J丸)の所有者Bは、相被告人Iから通常の3倍という高額な賃料での貸与を申し込まれた際、不審に思いつつも使途を調査せず漫然と貸与した。Iらは同船を密輸入貨物の運搬に供し、関税を逋脱した。Bは犯行後、Iから同船の返還を受けた。第一審および原審は、Bが悪意であったとは認定せず、善意であるが過失があったとして、同船の没収を言い渡したため、被告人が上告した。
あてはめ
1. Bについて、本件船舶が関税法違反の用に供されることをあらかじめ知っていた事実は認定されておらず、過失(善意)が認められるに過ぎない。したがって、没収の要件である「悪意」を欠く。 2. 犯行後にBがIから船舶の返還を受けたことは、元来の所有者が占有を回復したに過ぎず、新しく「所有権」を取得したわけではない。したがって、同条2項の「取得」には該当しない。
結論
悪意のない第三者の所有物を没収することはできず、また占有の回復は「取得」に当たらないため、本件船舶を没収した原判決は法令の解釈を誤った違法がある。没収部分を破棄する。
実務上の射程
刑事手続における第三者没収の合憲的限定解釈を示す重要判例。答案上は、没収が刑罰的性質を有することから、適正手続(憲法31条)や財産権保障(憲法29条)の観点に基づき、第三者の主観的要件(悪意)を厳格に要求する際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和28(あ)3657 / 裁判年月日: 昭和33年4月1日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】第三者の所有物を没収するには、当該第三者が犯罪行為の用に供されることをあらかじめ知っており、かつ犯罪時から引き続き当該物件を所有していることが必要である。 第1 事案の概要:被告人ら8名は、貨物を沖縄へ不法輸出する目的で船舶「H丸」及びその附属具を用いて実行に着手したが、発覚し検挙された(関税法違…
事件番号: 昭和29(あ)2757 / 裁判年月日: 昭和33年2月13日 / 結論: 棄却
犯人が旧関税法の密輸出行為の用に供した第三者所有の船舶については、所有者がその占有を犯人に移す際、それが密輸出の用に供せられることの事情につき善意であつたときは、旧関税法第八三条第一項により没収するをえないものである。
事件番号: 昭和29(あ)1420 / 裁判年月日: 昭和33年3月18日 / 結論: その他
第一審判決が無免許輸入未遂幇助の事実について犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した場合に、控訴裁判所がその点について何ら事実の取調をすることなく右判決を破棄し、訴訟記録および第一審裁判所において取り調べた証拠のみによつて直ちに右無免許輸入未遂幇助の事実についても有罪の判決をすることは、たとえ第一審判決中に被告人の同一船…