学童給食用輸入脱脂ミルク横流しの関税法違反の犯罪の成立に必要な犯意の内容は、学童給食用の輸入脱脂ミルクが法令上関税を免除されているものであることに鑑み、学童給食用の輸入脱脂ミルクであることを知つて、これを学童給食用以外の用途に供するため譲渡することの認識あれば足り、右輸入脱脂ミルクが免税品であることの認識を必要としない。
学童給食用輸入脱脂ミルク横流しの関税法違反罪の成立に必要な犯意の内容。
関税定率法附則(昭和35年法律36号による改正前のもの)8項,関税定率法附則(昭和35年法律36号による改正前のもの)9項,関税定率法附則(昭和35年法律36号による改正前のもの)11項,関税法110条1項1号,関税法117条,刑法38条3項
判旨
関税法違反の罪が成立するためには、対象物件が免税品であることの認識(違法性の意識)までは不要であり、対象物件の性質と用途外転用の認識があれば足りる。
問題の所在(論点)
関税法違反の犯罪の成立において、対象物品が「免税品であること」の認識が必要か、それとも「特定の用途に供されるべき物品を目的外に譲渡する」という事実の認識があれば足りるか、故意(犯意)の内包する範囲が問題となった。
規範
特定の用途を条件に関税を免除された物品を、当該用途以外に供するため譲渡する行為につき、犯罪の成立に必要な犯意(故意)の内容としては、対象物品が特定の用途(例:学童給食用)に向けられたものであること、およびこれを目的外の用途に供するために譲渡することの認識があれば足り、当該物品が法令上免税品であることまでの認識は不要である。
重要事実
被告人は、本来学童給食用として輸入され、法令上関税を免除されていた脱脂ミルクを、学童給食用以外の用途に供するために譲渡した。被告人は、当該ミルクが学童給食用である事実は認識していたが、それが関税法上の免税品であるという法的属性については認識していなかった可能性があるとして、犯意の有無が争われた。
あてはめ
本件において、被告人は譲渡した脱脂ミルクが「学童給食用」であることを認識していた。この事実は、当該物品が特定の公的な枠組みに属することを基礎付ける事実である。関税法違反の罪の成立には、この客観的事実および「目的外譲渡」という事実の認識があれば足り、その法的帰結である「関税免除の事実」という規範的な評価までを認識することは、責任の基礎としての故意には含まれないと解される。
結論
本件関税法違反の犯罪は成立する。免税品であることの認識を必要としないとした原判決の判断は正当である。
実務上の射程
行政刑法における「故意」の範囲を確定させる際に有用な判例である。行政上の義務違反を罰する規定において、前提となる行政法上の地位や法的性質(免税措置の有無等)そのものの認識は不要であり、その基礎となる事実的属性の認識があれば故意を肯定できるという論理を示す際に引用できる。
事件番号: 昭和38(あ)803 / 裁判年月日: 昭和39年2月27日 / 結論: 棄却
関税法第一一二条第一項に規定する同法第一一〇条第一項の犯罪にかかる貨物について、これを情を知つて有償で取得する等の罪は、その故買者においてその物が同条項の罪に係る貨物であることの認識があれば足り、同条項第一号と第二号のいずれに該当する行為に係る貨物であるかの事実までも知る必要はない(昭和二八年(あ)第三五七一号、同三〇…
事件番号: 昭和38(あ)783 / 裁判年月日: 昭和39年7月20日 / 結論: 棄却
輸入貨物について、当初より関税及び物品税を免れる目的をもつて虚偽の申告をして免税輸入の許可を受け、関税及び物品税を免れる罪は当該輸入貨物を保税地域より引取つたときに成立し、その後において用途外使用の申請をして関税及び物品税を納付しても一たん成立した罪が消滅することはない。
事件番号: 昭和29(あ)2757 / 裁判年月日: 昭和33年2月13日 / 結論: 棄却
犯人が旧関税法の密輸出行為の用に供した第三者所有の船舶については、所有者がその占有を犯人に移す際、それが密輸出の用に供せられることの事情につき善意であつたときは、旧関税法第八三条第一項により没収するをえないものである。