一 関税法(昭和二三年法律第一〇七号による改正後の明治三二年法律第六一号)第八三条第三項にいわゆる「犯人」の意義とは、密輸入者およびその従犯、教唆犯はもとより密輸入品たるの情を知つてその運搬、寄蔵、収受、故買または牙保をなしたものをも包含する。 二 同法第七六条ノ二第一項にいわゆる「貨物」の意義とは、同法第七四条第七五条または第七六条の犯罪にかかる一切の物品を指し、一括して密輸入された物品が密輸入完了後において分散され、取引の対象物が一個となつた場合でも、右条項の貨物であると解するを相当とする。
一 関税法(昭和二三年法律第一〇七号による改正後の明治三二年法律第六一号)第八三条第三項にいわゆる「犯人」の意義 二 同法第七六条ノ二第一項にいわゆる「貨物」の意義
旧関税法(明治32年法律61号―昭和23年法律107号による改正後のもの)83条,旧関税法(明治32年法律61号―昭和23年法律107号による改正後のもの)76条ノ2
判旨
密輸入された物品が、密輸入行為完了後に分散され取引の対象が一個となった場合であっても、当時の関税法76条の2第1項(現行の密輸品運搬罪等に相当)にいう「貨物」に該当する。
問題の所在(論点)
関税法(本件当時)76条の2第1項(密輸品の運搬・寄蔵等の罪)の客体である「貨物」について、密輸後に分散された個別の物品も含まれるか、その範囲が問題となった。
規範
関税法(本件当時)76条の2第1項にいう「貨物」とは、同法74条、75条又は76条の犯罪に係る一切の物品を指す。これは、一括して密輸入された物品が、密輸入行為の完了後に分散され、取引の対象物が個別の単位となったとしても、当該物品が犯罪に係るものである以上、その属性は失われないと解される。
重要事実
被告人らは、昭和27年5月14日に密輸入された貨物を寄蔵(保管)した。弁護側は、一括して密輸入された物品が密輸入行為完了後に分散され、取引の対象物が一個となった場合には、同条にいう「貨物」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人らが寄蔵した物品は密輸入された貨物の一部であった。判旨は、同条の「貨物」を犯罪に係る一切の物品と広く定義し、密輸入後に分散され一個の取引対象となった場合であっても、それが密輸という犯罪行為に由来する物品である事実に変わりはないとした。したがって、分散後の物品も依然として同条の「貨物」に該当すると判断される。
結論
一括して密輸入された物品が分散され、一個の取引対象となった場合であっても、関税法上の「貨物」に該当する。本件上告は棄却された。
実務上の射程
密輸品の後続犯(運搬・寄蔵等)の客体について、密輸時の形態を維持している必要はなく、分散後の個別物品であっても客体性を肯定する。刑法上の盗品等関与罪における「領得罪の親和物」の解釈と同様、犯罪組成物の継続的な捕捉を可能にする判断であり、関税法違反の事案における客体認定の基準として機能する。
事件番号: 昭和34(あ)266 / 裁判年月日: 昭和37年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税逋脱罪における没収・追徴の対象となる「犯罪に係る貨物」とは、逋脱税額に相当する一部の貨物ではなく、不実の輸入申告等によって関税の全部又は一部が免脱された対象貨物の全部を指す。 第1 事案の概要:被告人は、外国産の毛織物等(全長2,939メートル余、到着価格約816万円)を輸入する際、不実の低価…