憲法二二条二項の「外国に移住する自由」には、外国へ一時旅行する自由を含むものと解すべきであるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきであること、および旅券法一三条一項五号の規定は、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めたものであつて、憲法二二条二項に違反しないことは、昭和二九年(オ)第八九八号同三三年九月一〇日大法廷判決(民集一二巻一三号一九六九頁以下)の判示するところである。
外国旅行の自由と公共の福祉
出入国管理令60条,出入国管理令71条,旅券法13条1項5号,憲法22条2項
判旨
憲法22条2項の「外国に移住する自由」には一時的な外国旅行の自由も含まれるが、公共の福祉による合理的な制限に服する。旅券法13条1項5号および出入国管理令60条は、いずれも公共の福祉に基づく合理的な制限として合憲である。
問題の所在(論点)
1. 憲法22条2項の「外国に移住する自由」に、一時的な外国旅行の自由が含まれるか。2. 旅券法13条1項5号および出入国管理令60条による出国の制限は、憲法22条2項に違反しないか。
規範
1. 憲法22条2項の「外国に移住する自由」には、外国へ一時旅行する自由が含まれる。2. もっとも、当該自由は無制限に許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服する。
重要事実
被告人が、出入国管理令(当時)および旅券法の規定に関し、日本人の出国を制限する規定が憲法22条2項に違反すると主張して争った事案。具体的には、出入国管理令60条(日本人の出国手続)および旅券法13条1項5号(旅券の発給制限)の合憲性が問題となった。
あてはめ
1. 憲法22条2項は「外国に移住する自由」を保障しており、性質上これと不可分な一時旅行の自由も同条項の保障に含まれると解される。2. 旅券法13条1項5号(著しくかつ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認められる者に旅券を発給しないことができる旨の規定)は、国家の安全や秩序維持という公共の福祉を目的とするものであり、その制限は合理的である。3. 出入国管理令60条(有効な旅券を所持し、入国審査官から出国の確認を受けることを要する旨の規定)についても、適正な出入国管理を行うための合理的な手続的制限であり、憲法の趣旨に反しない。
結論
憲法22条2項は外国旅行の自由を保障するが、旅券法13条1項5号および出入国管理令60条は公共の福祉による合理的な制限として、同条項に違反しない。
実務上の射程
外国旅行の自由の憲法上の根拠を22条2項に求めたリーディングケースである。答案上は、まず「外国旅行の自由」が憲法により保障されることを明示した上で、制限の合憲性判定において「公共の福祉による合理的制限」という枠組みを用いる。本判決自体は具体的な審査基準を提示していないが、後の「帆足計事件」判決等と併せて、海外渡航制限の合憲性を論じる際の出発点となる。
事件番号: 昭和28(あ)968 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第三八九号、同三二年一二月二五日大法廷判決、刑集一一巻一四号三三七七頁)の趣旨によれば、出入国管理令六〇条は出国それ自体を法律上制限するものではなく、単に出国の手続に関する措置を定めたものであり、事実上かかる手続的措置のために外国旅行の自由が制限せられる結果を招来するような場合があるとし…
事件番号: 昭和44(あ)1232 / 裁判年月日: 昭和45年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出入国管理令(現:入管法)25条が定める出国手続の規定は、憲法22条2項に違反するものではない。日本国民に保障される「外国に移住する自由」も、公共の福祉による合理的制限に服するものである。 第1 事案の概要:被告人が、出入国管理令25条に規定された有効な旅券を所持せず、かつ入国審査官の出国確認を受…