一 出入国管理令第二五条は、憲法第二二条第二項に違反しない。 二 被告人が勾留状の執行により未決勾留中、他の事件の確定判決により懲役刑の執行を受けるに至つたときは、懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することは違法である。
一 出入国管理令第二五条の合憲性 二 懲役刑執行と未決勾留とが競合するときの未決勾留日数の算入の適否
出入国管理令25条,憲法22条2項,刑法21条
判旨
憲法22条2項の外国移住の自由は、性質上外国人にも保障されるが、出入国管理令による出国手続の強制は、公正な管理という公共の福祉に基づく合理的な制限として合憲である。また、刑の執行と未決勾留が競合する場合、当該期間を本刑に算入することは二重の利益を与えることになり許されない。
問題の所在(論点)
1. 憲法22条2項の「外国移住の自由」が外国人にも保障されるか、および出入国管理令による出国証印の強制が同条に違反しないか。 2. 刑の執行と未決勾留が競合する場合に、未決勾留日数を本刑に算入(刑法21条)できるか。
規範
憲法22条2項にいう「外国に移住し、又は国籍を離脱する自由」は、その権利の性質上、外国人にも保障が及ぶ。もっとも、公共の福祉による制限を免れるものではない。出入国の公正な管理という目的を達成するための手続的規制は、たとえ事実上外国移住の自由が制限される結果を招くとしても、公共の福祉に基づく合理的な制限として許容される。
重要事実
被告人らは、出入国管理令に基づき入国審査官から旅券に出国の証印を受けるべき義務があるにもかかわらず、これを受けずに本邦から朝鮮へ出国しようとした。弁護人は、同令25条2項および71条が外国人の外国移住の自由を不当に制限し、憲法22条2項に違反すると主張して上告した。また、被告人Aについては、別件の懲役刑の執行期間と本件の未決勾留期間が重複していたが、原審がその全期間を本刑に算入したことの是非が問題となった。
あてはめ
1. 憲法22条2項の自由は性質上外国人にも及ぶ。しかし、出入国管理令の証印規定は、出入国の公正な管理という重要な公共の目的のための手続的措置である。したがって、これによる事実上の制限は公共の福祉に基づく合理的なものであり、違憲ではない。 2. 未決勾留は自由を奪う点で自由刑に近いため、人権保護の観点から刑法21条による算入が認められる。しかし、既に別件の刑の執行を受けている期間は、勾留の有無にかかわらず拘束されており、実質的な自由の制限は刑の執行によるものである。これを通算すれば、一つの拘禁で二つの自由刑を同時に執行したのと同様の不合理な利益を被告人に与えることになり、刑法21条の趣旨に反する。
結論
1. 出入国管理令の規定は合憲であり、被告人らの有罪は維持される。 2. 刑の執行と競合する期間の未決勾留算入は違法である。被告人Aについては、執行期間を除いた未決勾留日数のみを本刑に算入する。
実務上の射程
外国人の人権享有主体性(性質説)のリーディングケースとして活用できる。特に「出国の自由」については、再入国の自由(マクリーン事件判決等)とは異なり、原則として保障が及ぶことを前提とした議論が可能である。また、未決勾留の算入については、実質的な不利益の有無を基準とする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和34(あ)1855 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
憲法二二条二項の「外国に移住する自由」には、外国へ一時旅行する自由を含むものと解すべきであるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきであること、および旅券法一三条一項五号の規定は、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めたもの…
事件番号: 昭和39(あ)911 / 裁判年月日: 昭和40年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出入国管理令による出国手続の義務付け及び旅券法に基づく旅券の発給制限は、憲法22条2項が保障する外国移住の自由を不当に制限するものではなく、公共の福祉による合理的な制限として合憲である。 第1 事案の概要:被告人は、有効な旅券を所持せず、かつ出入国管理令に基づく正規の出国審査手続を経ることなく日本…