判旨
出入国管理令による出国手続の義務付け及び旅券法に基づく旅券の発給制限は、憲法22条2項が保障する外国移住の自由を不当に制限するものではなく、公共の福祉による合理的な制限として合憲である。
問題の所在(論点)
出入国管理令が定める出国審査の義務付け、および旅券法による旅券発給の制限規定が、憲法22条2項の保障する「外国に移住する自由」を侵害し、違憲とならないか。
規範
憲法22条2項は、外国移住の自由を保障しているが、これは無制限なものではなく、公共の福祉による制限を受ける。国家の安全や秩序維持、国際的信義の保持といった公共の利益を目的とする旅券の発給制限や出国手続の規定は、その制限が合理的かつ必要最小限の範囲内である限り、同条に違反しない。
重要事実
被告人は、有効な旅券を所持せず、かつ出入国管理令に基づく正規の出国審査手続を経ることなく日本国外へ出国したとして、同令違反(密出国)の罪で起訴された。弁護側は、出国手続を強制する出入国管理令60条2項、71条、および旅券の発給制限を定める旅券法13条1項5号が、憲法22条(居住・移転の自由、外国移住の自由)に違反し、違憲無効であると主張して上告した。
あてはめ
判例(帆足計事件等)によれば、外国移住の自由は公共の福祉による制限を免れない。旅券法13条1項5号が定める、著しくかつ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがある者への旅券発給制限は、公共の福祉に基づく合理的な制限である。また、出入国管理令が出国の際に有効な旅券の所持と入国審査官の確認を求めることも、国家の適正な出入国管理を達成するための必要かつ合理的な手続といえる。したがって、これらの規定を前提とした処罰は憲法に反しない。
結論
出入国管理令および旅券法の各規定は、憲法22条に違反しない。したがって、適正な手続を経ない出国を処罰する原判決の判断は正当である。
実務上の射程
本判決は、帆足計事件(最大判昭33.9.10)等の先例を踏襲し、外国移住の自由が公共の福祉により制限されることを再確認したものである。答案上は、海外渡航の自由の性質(22条2項の問題)を論じる際の基準として、公共の福祉による制限の合理性を肯定する根拠として引用する。
事件番号: 昭和28(あ)968 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第三八九号、同三二年一二月二五日大法廷判決、刑集一一巻一四号三三七七頁)の趣旨によれば、出入国管理令六〇条は出国それ自体を法律上制限するものではなく、単に出国の手続に関する措置を定めたものであり、事実上かかる手続的措置のために外国旅行の自由が制限せられる結果を招来するような場合があるとし…
事件番号: 昭和44(あ)1232 / 裁判年月日: 昭和45年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出入国管理令(現:入管法)25条が定める出国手続の規定は、憲法22条2項に違反するものではない。日本国民に保障される「外国に移住する自由」も、公共の福祉による合理的制限に服するものである。 第1 事案の概要:被告人が、出入国管理令25条に規定された有効な旅券を所持せず、かつ入国審査官の出国確認を受…