一 刑訴法第二五五条第一項前段は、犯人が国外にいる場合は、そのことだけで、公訴の時効はその国外にいる期間中進行を停止することを規定したものである。 二 出入国管理令第六〇条第二項、第七一条は、憲法第二二条第二項に違反しない。
一 刑訴法第二五五条第一項前段の法意 二 出入国管理令第六〇条第二項、第七一条の合憲性
刑訴法255条1項,出入国管理令60条2項,出入国管理令条71条,憲法22条2項
判旨
憲法22条2項の「外国に移住する自由」には一時的な外国旅行の自由も含まれるが、公共の福祉による合理的な制限に服し、出入国管理令による出国手続きの義務付けやこれに違反した際の罰則規定は憲法22条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 憲法22条2項の「外国に移住する自由」に一時的な外国旅行の自由が含まれるか。また、同条項に基づく自由に対し、出入国管理令による手続き的制約や罰則を課すことは許されるか。 2. 刑訴法255条1項前段の「犯人が国外にいる場合」の時効停止に、捜査官の認知等の要件が必要か。
規範
憲法22条2項の「外国に移住する自由」には、外国へ一時旅行する自由も含まれるが、無制限に許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服する。また、出入国の公正な管理という目的達成のために設けられた出国の手続きに関する措置、およびその実効性を担保するための罰則規定は、憲法22条2項に違反しない。
重要事実
被告人は、出入国管理令(当時)が定める正規の出国手続きを経ずに国外へ出たとして、同令60条2項(日本人の出国確認を受ける義務)及び71条(同違反に対する罰則)の規定等に基づき起訴された。弁護人は、これらの規定が憲法22条2項(外国に移住する自由)に反し違憲であると主張して上告した。また、刑訴法255条1項前段の「犯人が国外にいる場合」の時効停止についても争点となった。
あてはめ
憲法22条2項は一時旅行の自由も包含するが、旅券法等の制限が公共の福祉による合理的制限として合憲であることは既定の判例(帆足計事件等)の通りである。出入国管理令の規定は、出国それ自体を禁止するものではなく、出入国の公正な管理を行うための手続的措置にすぎない。かかる手続の懈怠に罰則を科すことも、制度の目的達成のために必要かつ合理的な範囲内といえる。また、時効停止については、国外ではわが国の捜査権が及ばないという実態があるため、捜査官が犯罪を認知しているか否かを問わず、国外にいる期間一律に時効が停止すると解することには十分な合理的根拠がある。
結論
出入国管理令60条2項および71条は、憲法22条2項に違反しない。また、被告人が国外にいた期間の公訴時効の進行停止を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
外国旅行の自由が憲法22条2項により保障されることを明示した重要判例。答案上では、移動の自由に対する制約を論ずる際、まずは憲法22条2項の保障範囲として本判決を引用し、その上で公共の福祉による合理的制限(目的の正当性・手段の合理性)の枠組みで論証する。また、刑訴法上の公訴時効停止(255条)の解釈としても、国外滞在の客観的事実のみで停止する根拠として利用できる。
事件番号: 昭和28(あ)968 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第三八九号、同三二年一二月二五日大法廷判決、刑集一一巻一四号三三七七頁)の趣旨によれば、出入国管理令六〇条は出国それ自体を法律上制限するものではなく、単に出国の手続に関する措置を定めたものであり、事実上かかる手続的措置のために外国旅行の自由が制限せられる結果を招来するような場合があるとし…
事件番号: 昭和44(あ)1232 / 裁判年月日: 昭和45年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出入国管理令(現:入管法)25条が定める出国手続の規定は、憲法22条2項に違反するものではない。日本国民に保障される「外国に移住する自由」も、公共の福祉による合理的制限に服するものである。 第1 事案の概要:被告人が、出入国管理令25条に規定された有効な旅券を所持せず、かつ入国審査官の出国確認を受…