判旨
出入国管理令(現:入管法)25条が定める出国手続の規定は、憲法22条2項に違反するものではない。日本国民に保障される「外国に移住する自由」も、公共の福祉による合理的制限に服するものである。
問題の所在(論点)
出入国管理令(現:入管法)25条が定める日本国民の出国手続及び確認義務が、憲法22条2項で保障される「外国に移住する自由」を侵害し、違憲といえるか。
規範
日本国民に保障される「外国に移住する自由」(憲法22条2項)は、無制限に許容されるものではなく、公共の福祉による合理的な制限を免れない。したがって、出入国の公正な管理や治安維持の観点から設けられた出国手続を定める規定は、憲法22条2項に違反しない。
重要事実
被告人が、出入国管理令25条に規定された有効な旅券を所持せず、かつ入国審査官の出国確認を受けないまま日本国外に出国しようとした行為(いわゆる密出国)について、同令違反として起訴された事案。弁護人は、当該規定が憲法22条2項の「外国に移住する自由」を侵害し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、先行する大法廷判決(昭和32年12月25日判決)を引用し、日本国民の外国移住の自由も公共の福祉による制限を受けることを前提とした。本件における出入国管理令25条の規定は、出入国の公正な管理を目的とする合理的な制約であり、憲法の許容する範囲内であると判断される。被告人の行為は、この合理的な手続を潜脱するものであるため、有罪とする原判決に憲法違反の点はない。
結論
出入国管理令25条は憲法22条2項に違反しない。したがって、同条違反を問う原判決は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
人権の制約原理として「公共の福祉」を肯定した初期の判例の一つ。答案上では、居住・移転の自由や海外渡航の自由の限界を論じる際、公共の福祉による合理的制約の根拠として、昭和32年大法廷判決と併せて本判決を引用する。特に形式的な出国手続の合憲性を導く際の簡潔な論拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(あ)1855 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
憲法二二条二項の「外国に移住する自由」には、外国へ一時旅行する自由を含むものと解すべきであるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきであること、および旅券法一三条一項五号の規定は、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めたもの…
事件番号: 昭和39(あ)911 / 裁判年月日: 昭和40年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出入国管理令による出国手続の義務付け及び旅券法に基づく旅券の発給制限は、憲法22条2項が保障する外国移住の自由を不当に制限するものではなく、公共の福祉による合理的な制限として合憲である。 第1 事案の概要:被告人は、有効な旅券を所持せず、かつ出入国管理令に基づく正規の出国審査手続を経ることなく日本…