判旨
弁護士でない者が、報酬を得る目的で、他人の債権を譲り受ける形式をとりつつ、実質的にはその回収を業として行う行為は、弁護士法72条の「法律事務」の取扱い(非弁活動)に該当し、禁止される。
問題の所在(論点)
弁護士でない者が、他人の債権を譲り受ける形式(債権譲受)をとって債権回収を行うことが、弁護士法72条の禁止する非弁活動(法律事務の取扱い)に該当するか。
規範
弁護士法72条にいう「法律事務」とは、訴訟事件や調停事件などのほか、広く法律上の効果を発生・変更・消滅させる事項、または法律上の権利義務に関し争いがある事項等の処理を指す。債権譲渡の形式を採っていても、その実態が報酬を得る目的での他人の紛争への介入であれば、同条の「法律事務」の取扱いに該当する。
重要事実
被告人は、弁護士資格を有しないにもかかわらず、報酬を得る目的をもって、他人の債権を額面より著しく低額で譲り受ける形式を採った。その上で、実質的には債権者に代わって、債務者に対して強引な取り立て行為(恐喝を含む)を行い、回収した金員の一部を自己の利益とした。この一連の行為が弁護士法72条違反、貸金業法違反、恐喝罪等に問われた。
あてはめ
本件において被告人は、他人の債務の処理に関与する際、形式上は自己の債権として譲渡を受けているが、その目的はあくまで第三者の紛争に介入して報酬を得る点にある。このような「譲り受けた債権の行使」は、真実の債権譲渡とは異なり、実質的には他人の法律事務を代行しているに等しい。したがって、反復継続して報酬を得る目的で行われる以上、同条にいう「法律事務」の取扱いにあたるといえる。
結論
被告人の行為は弁護士法72条に違反する。債権譲渡の形式を採ることは、同条の適用を免れる脱法行為にすぎず、正当化されない。
事件番号: 昭和31(あ)914 / 裁判年月日: 昭和36年12月20日 / 結論: その他
一 原審が証拠により適法に認定した事実によれば、被告人は、利殖の目的をもつて原判示第二の(一)の日時場所において貸主としてA名義を使用し、Bに対し月七分ないし八分の利率をもつて金三〇万を貸し付けたほか、同様の方法で三回にわたり、同判示得第二の(二)ないし(四)の金員を同記載の利率をもつて貸し付けたというのであり、客観的…
実務上の射程
本決定は「事件性」がある事務への介入を非弁活動として画定した初期の重要例である。答案上は、非弁提携や債権回収代行の違法性を論じる際、形式的な契約形態(譲渡、委任)にかかわらず、その実質が「他人の法律事務への介入」にあるか否かを判断する基準として用いる。
事件番号: 昭和48(あ)679 / 裁判年月日: 昭和51年3月23日 / 結論: 破棄自判
弁護士法七二条にいわゆる「業とする」とは、反覆継続して行う意思のもとに同条列記の行為をすることをいうものと解されるところ、およそ、ある種行為に対する反覆継続の意思の有無を認定するにあたつては、当該本人が同種行為をどの程度行つているかを認定するに若くはないのであつて、それが適切な証拠調に基づいて認定されるものである限り、…
事件番号: 昭和36(あ)2883 / 裁判年月日: 昭和37年10月4日 / 結論: 棄却
弁護士でない者が報酬を得る目的で、原判示の事情のもとで債権者から債権の取立の委任を受けて、その取立のため請求、弁済の受領、債務の免除等の諸種の行為をすることは、弁護士法第七二条の、「その他一般の法律事件」に関して、「その他の法律事務」を取り扱つた場合に該当する。
事件番号: 昭和28(あ)601 / 裁判年月日: 昭和30年4月22日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律第二条にいう「貸金業」の意義は当裁判所の判例(昭和二六年(あ)第八五三号同二九年一一月二四日大法廷判決)のとおりであつて客観的に観察して貸金業としての形態を備えることは右「貸金業」の要件には属しない。