判旨
公判調書に権利告知の記載がないことをもって直ちに手続違背とはいえず、また、供述調書に契印がない一事のみで証拠価値が否定されるものではない。
問題の所在(論点)
1. 公判調書に被告人に対する告知の記載がない場合、当該手続がなされなかったとみなされるか。2. 供述調書に契印がない場合、その証拠価値は当然に否定されるか。
規範
1. 公判手続における被告人への権利告知(刑訴法291条等)について、公判調書の記載は必ずしも手続履践の唯一の証明手段ではなく、記載の欠落が直ちに手続未了を意味しない。2. 供述調書の証拠価値については、契印の有無という形式的不備のみによって一律に否定されるものではない。
重要事実
被告人の弁護人が、第一審の手続において刑訴法291条に基づく権利告知がなされたことが公判調書から確認できないこと、および証拠とされた供述調書に契印が欠落していることを理由として、訴訟手続の法令違反および証拠の許容性を争い上告した事案。
あてはめ
1. 刑訴規則44条が規定する公判調書の記載事項には、被告人に対する告知は含まれていない。したがって、調書に記載がないことをもって、直ちに告知手続がなされなかったと断定することはできない。2. 供述調書における契印の欠如は、作成上の形式的な不備にすぎず、その調書の成立の真正や記載内容の信用性(証拠価値)を当然に失わせる性質のものではないと解される。
結論
上告棄却。公判調書に記載がないことや、供述調書に契印がないことをもって、直ちに違法な手続や証拠価値の喪失を認めることはできない。
実務上の射程
公判調書の証明力(刑訴法52条)の限界や、供述調書の形式的要件の欠如が証拠能力・証拠価値に及ぼす影響を検討する際の基礎的な判断基準として利用できる。特に形式的瑕疵が実質的な権利侵害や証拠の真実性に直結しない場合の判断枠組みとして有用である。
事件番号: 昭和28(あ)5187 / 裁判年月日: 昭和29年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状の朗読は公判調書の必要的記載事項ではなく、その記載がないからといって直ちに朗読の事実を否定することはできない。 第1 事案の概要:被告人が、起訴状の朗読が行われなかったとして法令違反を主張し上告した。公判調書には起訴状朗読に関する記載が欠けていた。 第2 問題の所在(論点):刑事訴訟法291…