判旨
証拠調を経た供述調書の表示に不備がある場合であっても、記録上適法な証拠調べを経たことが明らかであれば、判決が掲げる証拠として有効に機能する。
問題の所在(論点)
証拠調手続における対象証拠の表示に不備がある場合、当該証拠を判決の基礎とすることは許されるか。証拠の特定と適法な証拠調べの有無が問題となる。
規範
証拠調手続の適法性は、記録上の経緯から実質的に判断される。たとえ調書の回数や通数の表示に形式的な不備があったとしても、その対象が特定され、かつ適法な証拠調べ手続を経ていると認められる限り、当該証拠を判決の基礎とすることは許容される。
重要事実
第一審第一回公判調書に編綴された被告人の検察官に対する供述調書5通について、回数や通数の表示に不備が存在した。第一審判決は、証拠として「被告人の供述調書(第二回乃至第五回)」を採証したが、弁護側は表示の不備を理由に刑訴法違反を主張して上告した。
あてはめ
記録によれば、問題となった5通の供述調書はすべて適法な証拠調べを経ていることが確認できる。第一審判決が「第二回乃至第五回」と表示した部分は、表示上の不備こそあれ、実際には適法な手続を経たこれら5通の調書全部を指していると合理的に解釈できる。したがって、形式的な表示の誤りは証拠能力や採証の適法性を左右するものではない。
結論
本件証拠調べおよび採証手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
証拠調べの対象が特定されており、実質的に手続が適正に行われている場合には、形式的な誤記や表示の不備があっても、直ちに刑訴法違反の理由とはならない。実務上、証拠等関係カードや判決書における証拠の引用・特定において、記録との実質的一致を重視する立場を示している。
事件番号: 昭和28(あ)4555 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟における検証の実施にあたり、被告人に対し適法な通知がなされており、かつ証人尋問に被告人が立ち会っている場合には、手続上の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が上告理由において、原審の手続に違法があると主張した事案。具体的には、特定の証人尋問や検証の手続において不備があったと主張し…