判旨
第一審における証拠調べ手続に違法があるとしても、被告人及び弁護人がこれに対して異議を述べていない場合には、当該手続を違法とすることはできない。
問題の所在(論点)
証拠調べ手続に瑕疵がある場合において、被告人や弁護人がその場で異議を申し立てなかったとき、後にその手続の違法を主張して上告理由とすることができるか。
規範
刑事訴訟法上の証拠調べ手続において、当事者(被告人・弁護人)が手続の違法を認識しつつ、それに対して適時に異議(刑訴法309条参照)を申し立てなかった場合には、当該手続の瑕疵は治癒され、事後にこれを違法として争うことは許されない。
重要事実
被告人が刑事事件について控訴し、さらに上告した事案。弁護人は上告趣意において、第一審における証拠調べ手続に違法があり、記録上の書類がすべて証拠書類として取り調べられたとは断定できない等と主張した。しかし、第一審の当該証拠調べ手続の際、被告人および弁護人は何ら異議を述べていなかった。
あてはめ
本件において、弁護人は第一審の証拠調べ手続の違法を主張するが、記録によれば当該手続の際、被告人および弁護人の双方が異議を述べていない。仮に主張されるような手続上の不備があったとしても、当事者が異議を留めずに手続を進行させた以上、適法な手続として確定したと評価される。また、当該主張は原審(控訴審)において何ら主張・判断されていない事項であり、刑訴法405条3号所定の上告理由にも該当しない。
結論
本件証拠調べ手続を違法ということはできず、上告を棄却する。
実務上の射程
証拠調べの方式等に関する手続的瑕疵については、刑訴法309条に基づく異議申し立てがなされない限り、後の上訴審で違法を主張することが困難になるという「責問権の喪失」に似た法理を示している。実務上、手続違法を争うには公判段階での即時の異議が不可欠である。
事件番号: 昭和28(あ)4555 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟における検証の実施にあたり、被告人に対し適法な通知がなされており、かつ証人尋問に被告人が立ち会っている場合には、手続上の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が上告理由において、原審の手続に違法があると主張した事案。具体的には、特定の証人尋問や検証の手続において不備があったと主張し…