判旨
証拠調べの範囲および限度は裁判所の合理的な裁量に属するため、口頭弁論終結後の言渡期日に提出された証拠を採用して証拠調べを行わなくとも、直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
口頭弁論終結後に提出された証拠について、裁判所が証拠調べを行わずに判決を言い渡すことが、証拠調べに関する裁判所の裁量権を逸脱し、違法となるか。
規範
証拠調べの範囲および限度は、裁判所の広範な裁量に委ねられている。したがって、訴訟の進行状況や提出の時期等に照らし、裁判所が必要でないと判断した証拠の申出を却下することは、特段の事情がない限り、裁判所の合理的な裁量権の行使として適法である。
重要事実
被告人の刑事裁判において、原審の口頭弁論が終結した。その後、判決の言渡期日に至って、弁護人が証拠となる書証を提出した。しかし、原審はこれを取り上げず、証拠調べを実施しないまま判決を言い渡した。弁護人は、当該証拠を採用しなかったことを不服として上告した。
あてはめ
本件において、弁護人が証拠を提出したのは、既に口頭弁論が終結し、判決を言い渡すのみとなっていた期日である。証拠調べの範囲と限度は裁判所の裁量に属するところ、審理が十分に尽くされ結審した後に提出された証拠を、あえて弁論を再開してまで採用するか否かは、裁判所の判断に委ねられる。本件原審が、このタイミングで提出された書証を採用しなかったことは、裁量の範囲内における適切な判断であるといえる。
結論
原審が口頭弁論終結後の証拠提出に対して証拠調べを行わなかったことは違法ではなく、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法297条1項が定める証拠調べの範囲・順序・方法に関する裁判所の裁量権を確認する事案として位置づけられる。答案上は、弁論終結後の証拠調べ請求や再開の要否が問われる場面で、裁判所の裁量を肯定する根拠として引用できる。
事件番号: 昭和25(あ)3452 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
第一審第六回公判において、本件と、第五回公判において被告人不出頭のため分離した相被告人Aに対する事件とを併合の上裁判官が同第五回公判調書中の前記証人の供述記載部分を被告人に読聞けたのに対し、弁護人は同証人の供述内容に基ずいて被告人に対し質問を行つているのであるから、同証人の尋問請求者たる弁護人としては該証人に対する取調…