判旨
証拠調べの必要性に関する判断は、事実審裁判所が各事件の訴訟状態や証拠関係等の諸般の事情を考慮して合理的に決定すべき裁量事項である。裁判所が必要でないと裁定して証拠申請を却下したとしても、それが審理の内容経過に照らして不合理でない限り、適法な証拠調べの限度の裁定として認められる。
問題の所在(論点)
裁判所が弁護人の証拠申請を却下して審理を終了させることが、裁判所の証拠調べに関する裁量権を逸脱し、被告人の防御権を不当に制限する違法なものといえるか。
規範
いかなる限度まで証拠調べをなすべきかは、事実審裁判所が各事件における訴訟状態、証拠関係、その他諸般の事情を考慮して合理的に裁定するところに委ねられている。この裁判所の裁量権は、その取調が必要でないと合理的に認められる場合には、弁護人の証拠申請を却下することを妨げない。
重要事実
被告人らは、共謀の上で被害者の顔面を殴打して反抗を抑圧し、現金を奪取したとして強盗罪で起訴された。被告人側は、被害者が酩酊して寝ている間に窃取したに過ぎないと主張し、原審(控訴審)において、被害者の喚問および犯行現場の検証を申請した。しかし、原審は、当該被害者は既に第一審で尋問済みであり、現場についても司法警察官の実況見分書が記録されている等の事情を鑑み、これらの証拠申請を却下して事実認定を行った。
あてはめ
本件において、原審が申請を却下した証人(被害者)は、既に第一審公判において尋問が実施されている。また、犯行現場についても既に司法警察官による実況見分書が作成されており、記録に編綴されていた。これらの訴訟状態や証拠関係を考慮すれば、原審が証拠の取調を必要でないと裁定したことは、本件における諸般の事情を斟酌した結果といえる。したがって、この判断は審理の内容経過に照らして不合理に立証を阻止したものとはいえず、適法な裁量の範囲内にあると解される。
結論
原審の証拠調べの限度の裁定に裁量権の逸脱はなく、これを前提とした強盗罪の事実認定は適法である。
実務上の射程
刑事訴訟における裁判所の証拠調べの必要性判断(刑訴法297条等)に関する広範な裁量を認めた判例である。答案上は、職権証拠調べや証拠申請の却下の妥当性が問われる場面で、裁判所の合理的な裁量を基礎づける規範として引用できる。特に、既に同趣旨の証拠が取り調べられている場合など、「証拠の重複」や「必要性の欠如」を認定する際の論理として有用である。
事件番号: 昭和24(れ)1612 / 裁判年月日: 昭和24年9月15日 / 結論: 棄却
憲法第三七條第二項は被告人又は辯護人からした申請に基きすべての證人を喚問し不必要と思われる證人までをも悉く訊問しなければならぬという譯でなく、證人申請の採否は、當該裁判所に實驗則に反しない限りにおいてその裁量にまかされていることがらであることは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第二三〇號、同年七月二九…