所論聴取書は、原判決が、犯罪事実認定の証拠に供したものではなく、単に被告人の供述の一部を措信しない理由の説示の根拠にしたに過ぎないものであるから、仮りに所論聴取書について適法な証拠調手続を履践していないとしても、原判決には証拠手続上の違法があるとはいえない。
単に被告人の供述の一部を措信しない理由の説示の根拠としたに過ぎない聴取書に対する適法な証拠調手続を欠くことと証拠手続上の違法の有無
旧刑訴法340条,旧刑訴法336条,旧刑訴法410条13号
判旨
犯罪事実を認定する証拠としてではなく、被告人の供述の一部を措信しない理由を説示する根拠(弾劾証拠)として用いる資料については、厳格な証明の対象とはならず、適法な証拠調べ手続を履践していなくとも直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
被告人の供述の信用性を否定するための資料としてのみ用いられる資料について、適法な証拠調べ手続を欠いたまま判決の理由説示に使用することが、証拠手続上の違法にあたるか。
規範
犯罪事実を認定するための実質証拠として用いる資料については適法な証拠調べ手続を要するが、供述の信用性を否定するための資料(弾劾証拠)として、判決文において単に「措信しない理由の説示の根拠」にするに留まる場合には、必ずしも厳格な証拠調べ手続を履践していることを要しない。
重要事実
原審において、裁判所が被告人の供述の一部を措信できない(採用できない)と判断する際、その理由を説明する根拠として検事によるBに対する聴取書を用いた。この聴取書について、弁護側は適法な証拠調べ手続が履践されていないとして、証拠手続上の違法を主張し上告したものである。
あてはめ
本件における聴取書は、原判決が犯罪事実の認定そのものに供した実質証拠ではない。あくまで被告人の供述の一部を措信しない(信用性を否定する)理由を論理的に説明するための補助的な資料として用いられたに過ぎない。したがって、仮に当該資料について厳格な証拠調べ手続が履践されていなかったとしても、判決の結論を左右するような証拠手続上の違法は認められないといえる。
結論
弾劾資料として用いるに過ぎない資料については、証拠調べ手続の不備があっても証拠手続上の違法とはならない。上告棄却。
実務上の射程
自己の供述の信用性を争う弾劾証拠の証拠調べ手続に関する判例であり、刑訴法328条の趣旨と関連させて理解すべき事案である。答案上は、実質証拠と弾劾証拠を区別し、後者については証拠能力や厳格な証拠調べの要請が緩和されることを示す文脈で活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)3334 / 裁判年月日: 昭和26年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕手続の違憲性は原判決の違法を直接構成するものではなく、適法な上告理由とはならない。また、第一審において対質の機会が与えられている以上、証拠調べ手続に違憲の過誤があるとは認められない。 第1 事案の概要:被告人が逮捕手続の違憲および証人Aに対する尋問手続の不備(対質の機会の欠如等)を主張して上告…