假りに所論のように、非現行犯を現行犯としての處分手續に據り司法警察官が被告人に對する訊問調書を作成し、檢事はこの訊問調書等を基礎として公訴を提起したとしても、そのこと自體は、裁判所の審理手續並びに判決に何等の影響を及ぼすものではないから、上告適法の理由とすることを得ないものである。
司法警察官が非現行犯を現行犯として處理した違法と上告理由
刑訴法124條,刑訴法411條
判旨
捜査段階の逮捕手続等に違法があったとしても、そのこと自体は公訴提起の効力や裁判所の審理・判決に影響を及ぼすものではない。また、違法に作成された証拠が判決の基礎とされていない限り、当該手続の違法を理由に判決を破棄することはできない。
問題の所在(論点)
逮捕手続等の捜査の違法が公訴提起の有効性や判決の妥当性に影響を及ぼすか。また、違法な手続によって得られた証拠が判決に用いられていない場合、当該違法は上告理由となるか。
規範
1. 捜査手続(逮捕や取調べ等)の違法は、それ自体が当然に公訴提起の効力を否定し、又は裁判所の審理・判決に影響を及ぼすものではない。2. 違法な手続によって作成された証拠であっても、判決がその証拠を事実認定の資料として採用していない限り、手続の違法のみをもって判決の違法とすることはできない。
重要事実
被告人が非現行犯であったにもかかわらず、司法警察官が現行犯としての処分手続に基づき被告人を拘束し、訊問調書を作成した。検察官はこの訊問調書等を基礎として公訴を提起したが、原審は当該訊問調書を証拠として採用せず、他の適法な証拠に基づいて犯罪事実を認定した。これに対し、被告人側は捜査手続の違法を理由に上告した。
あてはめ
仮に所論のように、非現行犯を現行犯として処理した手続に違法があり、その結果として訊問調書が作成されたとしても、そのこと自体は公訴提起の効力を左右せず、裁判所の審理・判決に影響を与えない。また、原判決は当該訊問調書を断罪の資料としておらず、他の適法な証拠によって事実を認定している。したがって、他に審理手続上の違法がない以上、被告人が違法な手続によって刑罰を科せられたものとはいえない。
結論
捜査段階の逮捕手続等の違法は、判決の基礎とされていない限り判決に影響を及ぼさない。本件公訴提起及び原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則や違法な強制捜査に基づく公訴棄却(違法捜査の重大性)が議論される前の極めて初期の判例である。現代の答案作成においては、手続違法が公訴提起を無効とするのは「重大な違法があり、かつ公訴提起自体が不当な目的に基づく場合」等に限定されるという法理(高輪グリーンマンション事件等)の前提となる「原則として捜査の違法は公訴の効力に影響しない」という法理を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2493 / 裁判年月日: 昭和27年12月11日 / 結論: 棄却
所論聴取書は、原判決が、犯罪事実認定の証拠に供したものではなく、単に被告人の供述の一部を措信しない理由の説示の根拠にしたに過ぎないものであるから、仮りに所論聴取書について適法な証拠調手続を履践していないとしても、原判決には証拠手続上の違法があるとはいえない。