控訴審においてはその性格上刑訴二九三条の準用がないことは当裁判所昭和二五年(あ)第六二号同二五年四月二〇日及び同二五年(あ)第一四一五号同年一〇月一二日の各第一小法廷の判決の趣旨とするところである。
控訴審において被告人に陳述の機会を与える要否
刑訴法293条,刑訴法388条,刑訴法404条
判旨
証拠物としての性格を有する書面の証拠調べにおいて、展示の手続きを欠いたとしても、その直後に被告人及び弁護人が異議がない旨を述べた場合には、手続上の違法は治癒される。
問題の所在(論点)
証拠物たる書面の証拠調べにおいて、展示の手続き(刑事訴訟法306条1項、307条等参照)を欠いた場合、その後の当事者の異議申立ての放棄によって手続的違法が治癒されるか。
規範
証拠調べ手続に瑕疵がある場合であっても、被告人及び弁護人が当該手続の直後に異議がない旨を明示的に述べたときは、その手続的瑕疵は治癒され、有効な証拠調べとして取り扱うことができる。
重要事実
被告人が起訴された刑事事件の第一審において、証拠物としての性質を有する書面が証拠として提出された。裁判所は、当該書面を朗読したが、証拠物の取り調べとして必要な「展示」の手続きを行わなかった。しかし、この証拠調べの直後、被告人及び弁護人は当該手続について「異議がない」旨を公判廷で述べた。
あてはめ
本件では、記録によれば第一審公判において当該書面が朗読される一方で、展示の手続きが履践されていない。しかし、その証拠調べの直後、被告人および弁護人はともに異議がない旨を述べている。この事後的な異議の不存在の表明により、仮に当該書面が証拠物として展示を要するものであったとしても、展示を欠いた手続上の不備は補填されたものと評価できる。
結論
証拠調べ手続の違法は治癒されたものと認められるため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における証拠調べ手続の瑕疵と治癒に関する基本的判例である。法309条1項に基づく異議の機会があったにもかかわらずこれを放棄・容認した場合には、後にその違法を争うことが制限されるという趣旨を含む。ただし、治癒が認められるのは軽微な手続違反や当事者の処分権が及ぶ範囲に限られる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和26(れ)49 / 裁判年月日: 昭和26年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に証拠として採用されていない書面に瑕疵があったとしても、判決に影響を及ぼさないことが明白であるならば、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が警察官や検察官による取調において、事実を曲げた強要による供述がなされたと主張した事案である。具体的には、被害者Aの被害顛末書および聴取書に瑕疵…