判旨
被告人の自白を証拠として取り調べる際、その前提として必ずしも他の全ての証拠の取り調べを終えている必要はなく、各犯罪事実について一定の補強証拠が取り調べられた後であれば、自白調書を取り調べることは適法である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上の証拠調べの順序に関し、自白の取り調べは必ず他の全ての証拠の取り調べを完了した後に行わなければならないのか、また自白調書の取り調べ後に他の証拠を調べることが許されるか。
規範
自白の証拠調べの順序について、刑事訴訟法上、他の証拠をすべて調べた後でなければ自白調書を調べてはならないという制約は存在しない。各罪につき自白以外の補強証拠が先行して取り調べられているなど、適正な順序に則っていれば、自白調書の取り調べ後に若干の証拠調べが行われたとしても、直ちに違法とはならない。
重要事実
被告人は詐欺及び横領の罪に問われた。第一審の証拠調べにおいて、裁判所はまず詐欺に関する補強証拠を取り調べた後に詐欺に関する自白調書を取り調べ、次いで横領に関する補強証拠を取り調べた後に横領に関する自白調書を取り調べた。ただし、自白調書を調べた後に、さらに若干の他の証拠を調べた事実があった。
あてはめ
本件では、詐欺及び横領の各事実について、それぞれ対応する補強証拠が自白に先立って取り調べられている。この順序は証拠調べの合理性に適うものであり、自白調書の取り調べ後に「若干の他の証拠」が調べられたとしても、自白の証拠能力や取り調べの適法性に影響を及ぼすものではない。したがって、所論のような証拠調べの順序に違法は認められない。
結論
自白調書を取り調べる際、他の証拠を全部調べた後でなければならないという制限はなく、本件の証拠調べに違法はない。上告棄却。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(あ)3712 / 裁判年月日: 昭和30年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白調書が他の証拠と一括して取調請求された場合であっても、実際の証拠調べにおいて当該自白調書に先立ち他の証拠が取り調べられたのであれば、刑訴法301条の趣旨に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の自白調書が、犯罪事実に関する他の証拠と一括して証拠調べの請求がなされた。しかし、第一審の公判…
実務上、刑事訴訟規則202条(自白の証拠調べ時期)の解釈として用いられる。自白以外の証拠を先に調べるという原則の趣旨が、自白による予断排除にあることを踏まえつつ、手続の柔軟性を認める判例として位置づけられる。答案上は、証拠調べ順序の違法が主張された際の反論の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和26(あ)120 / 裁判年月日: 昭和27年9月9日 / 結論: 棄却
第一審裁判官が補強証拠の取調べに先立ち所論の被告人の自白調書並びに上申書(自白を内容とする)の取調べをしていても、被告人は裁判官の質問に対し公訴事実を認めて争わず右各書証を証拠とすることに同意し、かつその証拠調に異議はないと、述べているのであるから必ずしも違法とすることはできない。