判旨
控訴趣意書の差出最終日の通知を弁護人に対しても行うべきとする刑訴規則236条1項は、通知の発送時点で既に弁護人選任届が提出されている場合に適用される。したがって、通知発送後に選任された弁護人に対して重ねて通知を行う必要はない。
問題の所在(論点)
控訴趣意書の差出最終日の通知を弁護人に対しても行うことを定めた刑訴規則236条1項の「弁護人があるとき」の基準時が問題となる。
規範
刑訴規則236条1項が、控訴申立人に弁護人があるときに弁護人に対しても控訴趣意書差出最終日の通知を要すると規定しているのは、最終日指定の通知を発送する当時、既に弁護人選任届が提出されている場合に、その弁護人に対しても通知することを要するという趣旨である。
重要事実
控訴審裁判所は、昭和30年5月30日に上訴記録の送付を受け、即日、被告人本人に対し弁護人選任に関する通知書と控訴趣意書差出最終日(同年7月4日)を指定した通知書を発送した。これに対し、被告人の弁護人選任届は、書面自体は同年5月28日付であったものの、実際に裁判所に提出されたのは通知発送後の同年6月1日であった。弁護人は、自身に最終日の通知がなされなかったことを不服として異議を申し立てた。
あてはめ
本件において、裁判所が被告人本人に対して控訴趣意書差出最終日の通知を発送したのは5月30日である。これに対し、弁護人選任届が原審裁判所に提出されたのは6月1日であり、通知発送の時点では、裁判所にとって有効な弁護人の存在は確認できていない。選任届の作成日が通知前であっても、裁判所への提出が通知発送後である以上、刑訴規則236条1項の「弁護人があるとき」には該当しない。したがって、裁判所が当該弁護人に対して個別に最終日の通知を行わなかったとしても、同条項に違反するものではないと評価される。
結論
控訴趣意書差出最終日の指定後に弁護人選任届が提出された場合、当該弁護人に対して最終日の通知を行う必要はなく、原審の手続に違法はない。
事件番号: 昭和30(し)1 / 裁判年月日: 昭和30年10月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の提出最終日を弁護人に通知すべき義務は、当該最終日の指定当時において既に選任されている弁護人に対してのみ認められる。したがって、指定後に選任届が提出された弁護人に対しては、裁判所は改めて最終日の通知を行う必要はない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を申し立てたが、裁判所が控訴趣意書の提出…
実務上の射程
弁護人に対する通知義務の有無は「通知発送時」の選任届提出の有無で決まるという形式的・画一的な基準を示したものである。実務上、選任届の提出が遅れた弁護人は、被告人に届いた通知等を確認して自ら差出期限を把握すべき責任を負うことになる。答案上は、通知義務違反の有無を検討する際の判断基準時を特定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和40(し)53 / 裁判年月日: 昭和40年7月29日 / 結論: 棄却
刑訴規則第二三六条の法意は、控訴趣意書差出最終日の通知は、右最終日の指定後に弁護人選任届の提出された弁護人に対してはこれをすることを要しない趣旨と解すべきである。(昭和二五年(あ)第二七七七号同二七年五月六日第三小法廷判決、刑集六巻五号七三三頁参照)
事件番号: 昭和56(す)128 / 裁判年月日: 昭和56年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意書の差出最終日が指定された後に選任された弁護人に対しては、裁判所は改めて差出最終日の通知をする義務を負わない。 第1 事案の概要:暴行被告事件において、最高裁判所が上告趣意書の差出最終日を指定した。その後、弁護人が選任されたが、裁判所は新しく選任された弁護人に対して差出最終日の通知を行わな…
事件番号: 昭和39(し)13 / 裁判年月日: 昭和39年3月12日 / 結論: 棄却
控訴趣意書提出最終日指定の後に弁護人選任届の提出された弁護人に対しては、右最終日の通足を要しないことは、当裁判所の屡次の判例−昭和二五年(あ)第二七七七号、同二七年五月六日第三小法廷判決、刑集六巻五号七三三頁・昭和三六年(し)第四六号、同年一一月一四日第二小法廷決定、裁判集第一四〇号一二三頁・昭和三七年(し)第三五号、…
事件番号: 昭和50(し)62 / 裁判年月日: 昭和50年8月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書差出最終日の指定通知後に選任された弁護人に対し、改めて当該最終日の通知を行う必要はなく、これを通知しなかったとしても憲法13条、32条、37条に違反しない。 第1 事案の概要:控訴審において、裁判所が控訴趣意書の差出最終日を指定し、その通知を行った。しかし、当該指定通知がなされた後に、新…