判旨
控訴趣意書の提出最終日を弁護人に通知すべき義務は、当該最終日の指定当時において既に選任されている弁護人に対してのみ認められる。したがって、指定後に選任届が提出された弁護人に対しては、裁判所は改めて最終日の通知を行う必要はない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟規則236条1項に基づき、裁判所が弁護人に対して控訴趣意書の提出最終日を通知すべき義務を負う範囲。特に、最終日の指定・通知後に選任された弁護人に対しても、別途通知を行う必要があるか。
規範
刑事訴訟規則236条1項が弁護人に対する控訴趣意書提出最終日の通知を定めているのは、最終日の指定(通知の発出)時点で既に選任されている弁護人が存在する場合に、その弁護人に対しても通知すべきことを趣旨とする。したがって、指定後に選任された弁護人に対しては、通知義務は及ばない。
重要事実
被告人は控訴を申し立てたが、裁判所が控訴趣意書の提出最終日を指定し通知した後に、新たな弁護人が選任され、選任届が提出された。当該弁護人に対しては最終日の通知がなされなかったため、弁護人はこの手続上の不備を理由に、判例違反および憲法違反を主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件において、問題となっている弁護人の選任届が提出されたのは、裁判所による控訴趣意書提出最終日の指定がなされた後である。規則の趣旨に照らせば、通知義務の対象は指定時に既知の弁護人に限られる。本件弁護人は指定後に登場した者である以上、裁判所が改めて通知を行わなかったとしても、刑事訴訟法又は刑事訴訟規則に違背するものではない。
結論
最終日の指定後に選任された弁護人に対しては、通知を要しない。したがって、原決定に判例違反等は認められず、本件特別抗告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和39(し)13 / 裁判年月日: 昭和39年3月12日 / 結論: 棄却
控訴趣意書提出最終日指定の後に弁護人選任届の提出された弁護人に対しては、右最終日の通足を要しないことは、当裁判所の屡次の判例−昭和二五年(あ)第二七七七号、同二七年五月六日第三小法廷判決、刑集六巻五号七三三頁・昭和三六年(し)第四六号、同年一一月一四日第二小法廷決定、裁判集第一四〇号一二三頁・昭和三七年(し)第三五号、…
控訴審手続における弁護権保障の限界を示す射程を持つ。答案上は、弁護人の選任時期と通知の有無が争点となる場合に、手続の適法性を肯定する根拠として活用する。実務的には、後任の弁護人は自ら記録を確認して提出期限を把握すべき責任を負うことを示唆している。
事件番号: 昭和30(し)46 / 裁判年月日: 昭和30年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の差出最終日の通知を弁護人に対しても行うべきとする刑訴規則236条1項は、通知の発送時点で既に弁護人選任届が提出されている場合に適用される。したがって、通知発送後に選任された弁護人に対して重ねて通知を行う必要はない。 第1 事案の概要:控訴審裁判所は、昭和30年5月30日に上訴記録の送付…
事件番号: 昭和50(し)62 / 裁判年月日: 昭和50年8月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書差出最終日の指定通知後に選任された弁護人に対し、改めて当該最終日の通知を行う必要はなく、これを通知しなかったとしても憲法13条、32条、37条に違反しない。 第1 事案の概要:控訴審において、裁判所が控訴趣意書の差出最終日を指定し、その通知を行った。しかし、当該指定通知がなされた後に、新…
事件番号: 昭和36(し)46 / 裁判年月日: 昭和36年11月14日 / 結論: 棄却
控訴趣意書提出最終日指定の後に弁護人選出届の提出された弁護人に対しては、右最終日の通知を要しない、とした原判示は相当である。(昭和二五年(あ)二七七七号、同二七年五月六日第三小法廷判決、刑集六巻五号七三三頁参照)
事件番号: 昭和45(し)5 / 裁判年月日: 昭和45年2月13日 / 結論: 棄却
控訴趣意書差出最終日指定後選任された弁護人に、あらためて最終日の通知をしなかつたことを違法でないとして、控訴棄却の決定に対する異議申立を棄却した原決定は、憲法三二条、一三条に違反しない。