判旨
共犯関係にある被告人らが各別に審理される場合において、一主体の裁判官が一方の被告人に有罪判決を言い渡した事実は、直ちに他方の被告人の裁判における除斥及び忌避の事由(刑事訴訟法20条、21条)には当たらない。
問題の所在(論点)
共犯関係や対向犯の関係にある複数の被告人が各別に審理される際、同一の裁判官が一方の被告人に有罪判決を下したことが、他方の被告人の審判において刑事訴訟法上の除斥事由(20条)または忌避事由(21条1項)に該当するか。
規範
刑事訴訟法20条各号に掲げる除斥事由は限定的に解釈すべきであり、また「不公平な裁判をするおそれ」(同法21条1項)の判断においては、裁判官が別個の被告人に対する関連事件で既に判断を示したという一事のみでは、直ちに公正な裁判を妨げる客観的事情があるとは認められない。
重要事実
公職選挙法違反の事案において、選挙運動報酬を供与した側(贈賄側)の被告人と、その供与を受けた側(収賄側)の被告人とが、同一の裁判官により各別に審理された。裁判官は、まず一方の被告人に対して有罪判決を言い渡した後、引き続き他方の被告人の裁判を担当した。これに対し被告人側が、当該裁判官には除斥または忌避の事由があり、憲法37条の保障する公平な裁判所の審判に反すると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件のように、報酬の供与側と受領側という対向犯の関係にある被告人らが別個に審理されている場合、先行する裁判で一方に有罪判決が下されたとしても、それはあくまで当該被告人に対する証拠に基づいた判断である。裁判官が先行事件で事実認定を行った事実は、後続の被告人に対する審判において予断をもって臨むことを意味せず、直ちに裁判の公正を害する客観的事態が生じたとはいえない。したがって、本件裁判官に除斥事由はなく、忌避事由も認められない。
結論
同一裁判官が共犯者の一方に有罪判決を下した後に他の共犯者を審理しても、除斥・忌避事由には当たらない。また、これによる審判は憲法37条にも違反しない。
事件番号: 昭和36(し)21 / 裁判年月日: 昭和36年6月14日 / 結論: 棄却
裁判官が共犯者に対して被告人との共謀にかかる公訴事実につき有罪の判決をしたことだけでは、被告人に対する右公訴事実につき審判をするにあたつて忌避の原因とはならない。
実務上の射程
刑事訴訟法20条7号の「前審」の解釈(関連事件の予断排除)に関する重要判例。共犯者の裁判に関与したことが「前審に関与した」ことに含まれないとする原則を確立しており、実務上、併合審理されない関連事件の配転において重要な指針となる。
事件番号: 昭和29(し)45 / 裁判年月日: 昭和30年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもった裁判所による裁判を意味する。 第1 事案の概要:弁護人が、原決定の判断を非難し、憲法37条1項に違反するとして特別抗告を申し立てた事案。具体的な不公正の内容については判決文からは不明であるが、原決定の法…
事件番号: 昭和29(し)44 / 裁判年月日: 昭和30年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもった裁判所を意味する。本件では、被告人側の主張が実質的に訴訟法違反の主張にすぎず、憲法違反の事由に当たらないとして特別抗告が棄却された。 第1 事案の概要:申立人(弁護人)は、原決定に憲法37条1項違反があるとし…
事件番号: 昭和29(し)46 / 裁判年月日: 昭和30年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもった裁判所を意味する。被告人の権利を実質的に保障するため、客観的に不公平な裁判が行われるおそれのない外観を備えていることが要求される。 第1 事案の概要:申立人(弁護人)が、原決定の判断に不服があるとして憲法37…
事件番号: 昭和31(し)3 / 裁判年月日: 昭和31年9月25日 / 結論: 棄却
被告人に対する背任の公訴事実と社会的事実関係を同じくする民事訴訟事件の審判に関与した裁判官が、右背任被告事件について合議体の一員として審判に関与しても、それだけでは刑訴第二一条第一項に該当せず、また憲法第三七条第一項の公平な裁判所ではないとはいえない。