判旨
選挙運動に関して報酬と実費が区別されず包括的に供与された場合、その全額が買収罪における利益供与に当たると判断した。
問題の所在(論点)
選挙運動に関して金銭等が供与された際、それが正当な費用(実費)と、違法な報酬(買収)とを区別せずに一括して渡された場合、その全額を公職選挙法上の買収罪(利益供与)の対象として扱うことができるか。
規範
選挙運動に関し、その報酬(労務の対価)と費用(実費)とを区別することなく包括して金銭等が供与されたときは、その全額を非合法な利益供与と認めるのが相当である。
重要事実
被告人らは、公職選挙法違反(買収及び利害誘導等)の罪に問われた。具体的な事実関係として、選挙運動に従事した者に対し、正当な実費弁償の範囲を超える金員、あるいは実費と報酬の区別が明確になされないまま一括して金銭が提供された事案である(詳細は決定文から不明だが、報酬と費用が包括供与された事実が前提となっている)。
あてはめ
本件のような選挙運動に関する事実関係においては、名目上「費用」が含まれていたとしても、それが「報酬」と明確に区分されず包括的に供与されている。このような供与形態をとる以上、その全体が選挙運動の対価としての性格を帯びるため、一部に実費相当額が含まれていたとしても、その全額を非合法な利益供与と解するのが相当である。
結論
選挙運動に関し、報酬と費用を区別せず包括して供与されたときは、その全額が買収罪を構成する。したがって、被告人らの上告は棄却される。
実務上の射程
公職選挙法上の買収罪の成否において、被告人側が「一部は実費である」と反論した場合の反論として機能する。実費と報酬が未分化な包括供与であれば、全額について違法性を肯定できるという実務上の処理基準を示している。
事件番号: 昭和30(あ)1837 / 裁判年月日: 昭和30年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙運動の報酬とその他の名目(祝儀等)が混在して一括授受された場合、その授受が不可分的である限り、授受された金員全額について公職選挙法違反罪(買収罪・利害誘導罪)が成立する。 第1 事案の概要:被告人らが、選挙運動の報酬等の趣旨で金員を授受した際、その名目の中に「ゑびす祝」という祝儀としての名目も…
事件番号: 昭和29(あ)2901 / 裁判年月日: 昭和30年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法違反の事案において、買収資金や運動報酬が実費と不可分に一括交付された場合、その全額が不法性を帯びるものとして処罰の対象となる。 第1 事案の概要:被告人らは公職選挙法違反(買収等)に問われた。争点の一つとして、交付された金員の中に正当な実費が含まれている場合の処置が問題となった。被告人側…