判旨
公職選挙法違反の事案において、買収資金や運動報酬が実費と不可分に一括交付された場合、その全額が不法性を帯びるものとして処罰の対象となる。
問題の所在(論点)
買収資金や運動報酬に、正当な実費が含まれ、かつそれらが不可分的に一括交付された場合、どの範囲に不法性が認められるか(公職選挙法221条1項各号等の適用範囲)。
規範
買収資金又は選挙運動員への報酬と、実費(交通費・宿泊費等)とが不可分的に一括して交付された場合には、交付された金額の全額が不法性を帯びるものと解すべきである。
重要事実
被告人らは公職選挙法違反(買収等)に問われた。争点の一つとして、交付された金員の中に正当な実費が含まれている場合の処置が問題となった。被告人側は、実費相当分については不法性が認められない旨を主張したが、原審は交付された金員全体を不法なものと認定した。
あてはめ
金員の交付が買収や報酬の趣旨で行われる際、それが実費の弁済という側面を併せ持っていたとしても、両者が分かちがたく一体となって交付されている以上、その一部を適法な支出として切り離すことはできない。したがって、交付された金員全体が買収資金または報酬としての性質を帯びる。本件においても、実費とそれ以外の金員が不可分に一括交付された事実に照らせば、その全額に不法性が認められると判断される。
結論
買収資金等と実費が一括交付された場合、その全額が不法なものとして公職選挙法違反を構成する。被告人らの上告は棄却された。
実務上の射程
選挙犯罪における買収罪の成立範囲に関する判例であり、実費名目での金銭授受が含まれる場合でも、一括交付されていれば全額を不法な支出と認定できる。実務上は、交付の不可分性を立証することで、処罰範囲の画定を容易にする規範として機能する。
事件番号: 昭和28(あ)5129 / 裁判年月日: 昭和29年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員が報酬と費用の性質を併せ持ち、それらが不可分的に授受された場合には、その全額について報酬としての性質を肯定し得る。 第1 事案の概要:被告人らが金員を受領した際、その名目が報酬および費用の両方を含んでいた事案。弁護側は当該金員がすべて実費(費用)であると主張したが、第一審および原審は、当該金員…