判旨
金員が報酬と費用の性質を併せ持ち、それらが不可分的に授受された場合には、その全額について報酬としての性質を肯定し得る。
問題の所在(論点)
授受された金員の中に実費(費用)が含まれている場合、その全額を報酬等として認定することができるか。報酬と費用の峻別が困難な「不可分的授受」の評価が問題となる。
規範
授受された金員が実費(費用)としての性格を有していたとしても、それが報酬としての性格を併せ持ち、かつ両者が不可分一体のものとして授受された場合には、当該金員全体を報酬(ないしは賄賂等の禁止された利益)として認定することが可能である。
重要事実
被告人らが金員を受領した際、その名目が報酬および費用の両方を含んでいた事案。弁護側は当該金員がすべて実費(費用)であると主張したが、第一審および原審は、当該金員が報酬と費用として不可分的に授受されたものであると認定した。
あてはめ
本件において、授受された金員は、純粋な実費としてのみ授受されたのではなく、報酬としての性質をも含んでおり、かつ両者が分かちがたく結びついた状態で授受されている。このように、報酬と費用が不可分的に授受されたと認められる以上、金員全体に報酬性が及ぶと解すべきであり、全額が実費であるとの被告人の主張は採用できない。
結論
金員が報酬と費用の趣旨で不可分的に授受された以上、その全体を報酬等として認定することは適法であり、有罪判決は維持される。
実務上の射程
収賄罪や公職選挙法違反(買収)等の事件において、供与された利益に「実費」名目が混在している場合、実費分を控除せず全額を犯罪組成事実として認定するための根拠となる。あてはめでは、報酬と実費を区分して合意した形跡がないこと等の「不可分性」を基礎づける事実を摘示することが重要となる。
事件番号: 昭和28(あ)4080 / 裁判年月日: 昭和29年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙に関連して受領した金員が、検察官に対する供述等からその性質が「報酬」であると認められる場合には、公職選挙法違反の罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人が選挙に関連して5,000円を受領した。この金員の性質について、被告人は検察官に対し、それが選挙に関する報酬である旨の供述を行っていた。弁護人…