原判決は、本件金員が専ら所論の如き選挙運動の実費または労務者に対する正当な報酬として授受されたものとは認定していないのであつて、それ以外の選挙運動に対する報酬などとして不可分的に授受されたものと認定しているのであるから、被告人において、仮に該金員を悉く実費等に充当したと仮定しても、公職選挙法二二一条一項四号の受供与罪の成否に何ら消長を来たすものではない。
選挙運動の実費または正当な報酬とそれ以外の選挙運動に対する報酬とを不可分的に授受された場合と公職選挙法第二二一条第一項第四号の罪の成否
公職選挙法221条1項4号,公職選挙法197条の2,公職選挙法187条1項
判旨
選挙運動の実費や正当な報酬と、それ以外の選挙運動に対する報酬が不可分的に授受された場合、仮にその全額を実費等に充当したとしても公職選挙法221条1項4号の受供与罪は成立する。
問題の所在(論点)
選挙運動の実費や正当な報酬の性質を持つ金員が、それ以外の選挙運動に対する報酬等と不可分に授受された場合、公職選挙法221条1項4号の受供与罪が成立するか。
規範
公職選挙法221条1項4号の「利害誘導罪(受供与罪)」において、供与された金員が正当な「実費」や「報酬」としての性質を有する部分を含んでいたとしても、これらが他の選挙運動に対する報酬としての性質を有する部分と「不可分的」に授受されている場合には、当該金員全額について同罪の客体性が認められる。
重要事実
被告人は、選挙運動に関する金員を受領したとして公職選挙法221条1項4号違反で起訴された。弁護人は、本件金員が専ら選挙運動の実費または労務者に対する正当な報酬として授受されたものであり、被告人は実際にその全額を実費等に充当したと主張して、同罪の成立を争った。
あてはめ
原判決の認定によれば、本件金員は単なる実費や正当な報酬としてのみ授受されたのではなく、それ以外の選挙運動に対する報酬等としての性質を併せ持ち、かつ両者が不可分的に授受されたものである。このような場合、受領した金員の一部に正当な対価の性質が含まれていたとしても、全体として報酬としての性格を帯びるものと評価される。したがって、被告人が仮に当該金員をすべて実費等に充当したとしても、不可分な報酬の一部を受領した事実に変わりはなく、同罪の成否に影響を及ぼさない。
結論
本件金員が不可分的に報酬として授受された以上、受供与罪が成立する。
実務上の射程
選挙犯罪における報酬供与の事案において、実費弁償等の適法な名目と違法な報酬が混在している場合の判断基準を示す。授受の態様が「不可分的」であれば、事後的な使途が適法なものであっても罪の成立を妨げないという実務上の処理を明確にしている。
事件番号: 昭和28(あ)4123 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
公職選挙法において選挙運動者が其の運動をすることについて報酬を受けることを禁じても、財産権を侵害するものではない。