判旨
公職選挙法違反の供与罪において、渡された金員が正当な費用と報酬等の名目を一括して処分を任されたものであり、その割合を判別できない場合には、その全額について供与罪が成立する。
問題の所在(論点)
公職選挙法における供与罪において、交付された金員に正当な費用と報酬が混在し、その内訳が不明な場合に、どの範囲で罪が成立するか(全額について罪が成立するか)。
規範
公職選挙法上の買収罪(供与罪)の成否につき、交付された金員の中に正当な費用弁償等の名目が含まれていたとしても、それが報酬等と一括して交付され、受領者がその処分を包括的に任されており、かつ両者の割合を客観的に判別し得ない場合には、交付された金員の全額について供与罪の成立を認めるべきである。
重要事実
被告人が選挙運動に関連して金員を供与した事案において、当該金員は正当な費用報酬等(実費弁償等)の名目を含んでいたものの、一括してその処分が受領者に任されていた。具体的にどの部分が正当な対価で、どの部分が買収目的の報酬にあたるのか、その割合を明確に判別することができない状況であった。
あてはめ
本件において、判示された金員は費用報酬等として一括して交付されており、受領者はその処分を包括的に任されていた。このように、正当な実費と不法な報酬の割合を判別し得ない態様で金員が渡された以上、その全体が買収の手段としての性格を有すると評価せざるを得ない。したがって、金員の一部に正当な名目が含まれ得るとしても、その全額について供与罪の成立を認めた原判決の判断は正当である。
結論
交付された金員の割合を判別し得ない以上、その全額につき供与罪が成立する。
実務上の射程
買収事案において「実費弁償である」との弁解がなされた際、名目や使途が未分化で一括交付されている事実を指摘し、全額について買収罪の成立を基礎付けるための判断枠組みとして活用できる。また、公職選挙法252条の選挙権・被選挙権停止規定の合憲性についても言及しており、憲法上の論点としても引用可能性を留保すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)4950 / 裁判年月日: 昭和29年6月19日 / 結論: 棄却
一 投票買収資金と法廷選挙費用とが一括交付され、その区分ができない場合には、その全額につき公職選挙法第二二一条第一項第五号の交付罪が成立すると解すべきである。 二 第一審判決が公職選挙法第二二一条第一項第一号を適用したのは誤であつて、同項第五号を適用すべきであるが、この法令適用の誤は判決に影響することが明らかでないとし…