判旨
法の改正後に行われた犯行に対し、改正後の法律を適用して処断することは、憲法39条前段の遡及処罰禁止の規定に違反しない。
問題の所在(論点)
法律の改正後に行われた犯罪行為に対し、その改正法を適用して処断することが、憲法39条(遡及処罰の禁止)に違反するか。
規範
実行の時に適法であった行為や、既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない(憲法39条前段)。もっとも、法律の改正後に行われた行為に対して、その施行された改正法を適用することは、事後法の禁止には抵触しない。
重要事実
被告人は、覚せい剤取締法の改正後に同法に違反する犯行に及んだ。これに対し、裁判所は改正後の同法を適用して処断した。これに対し弁護人は、改正法を適用して処罰することは憲法39条に違反するとして上告した。
あてはめ
本件における被告人の犯行は、覚せい剤取締法の改正後に行われたものである。憲法39条が禁止するのは、行為時に適法であった行為を後から制定された法律で処罰すること(遡及処罰)であるが、本件では行為時点ですでに改正法が施行され、当該行為が禁止されていた。したがって、改正法を適用して処断することについて、憲法39条違反を主張する前提を欠いているといえる。
結論
法改正後の犯行に対し改正法を適用することは、憲法39条に違反しない。
実務上の射程
憲法39条の遡及処罰禁止の原則における「実行の時の法律」の意義を確認する極めて基礎的な判例である。改正法の施行日以後の行為に当該法律を適用する限り、憲法上の問題は生じないことを端的に示しており、答案上は遡及処罰の該当性を否定する際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和29(あ)3905 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
常習として麻薬取締法(昭和二八年法律第一四号により改正されたもの)施行前から施行後まで引き続き塩酸ジアセチルモルヒネの譲り受け等をした所為には、同法第六七条第一項を適用すべきである。