判旨
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を伴い、人道上耐え難い苦痛を与える刑罰を指すものであり、先行する最高裁判例の基準を維持するものである。
問題の所在(論点)
特定の刑の言い渡しが重すぎる(不当に重い)という「量刑不当」の主張が、憲法36条にいう「残虐な刑罰」にあたり、適法な上告理由(刑事訴訟法405条1号)となり得るか。
規範
憲法36条にいわゆる「残虐な刑罰」とは、刑罰の内容・性質が、火あぶり、はりつけ、かまゆでのような不必要な苦痛を伴い、人道的見地から見て著しく非人道的・屈辱的であると認められるものを指す(昭和23年3月12日大法廷判決等の趣旨を承継)。
重要事実
上告人は、下級審の刑の言渡しに対し、その量刑が重すぎることを理由に憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当し違憲である旨を主張して上告を申し立てた。なお、具体的な犯行事実や下級審で言い渡された刑の種類・期間については判決文からは不明である。
あてはめ
上告人が主張する実質的な内容は、法律の定める範囲内での量刑の不当性にあると認められる。しかし、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」は刑罰の性質そのものが非人道的であることを指すものであり、量刑が不当に重いという主張は直ちに同条の違憲問題には当たらない。したがって、本件上告は刑訴法405条の定める上告理由(違憲)に欠けるものと解される。
結論
上告人の主張は実質的には単なる量刑不当の主張に帰し、憲法36条違反には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
量刑不当を憲法違反に仮託して主張することを制限する実務上の指針。答案上は、死刑制度の合憲性や、特定の刑罰規定(尊属殺人重罰規定等)の適正性を論じる際の定義付けとして利用されるが、本判決自体は量刑判断と憲法適用の峻別を示すものとして重要である。
事件番号: 昭和27(あ)5393 / 裁判年月日: 昭和28年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、刑罰の性質そのものが人道上残酷と認められるものを指し、具体的な事案に対する法定刑の選択や量刑の不当を指すものではない。 第1 事案の概要:被告人が犯した具体的な罪状については判決文からは不明であるが、弁護人は上告趣意において、原判決の量刑が不当に重いことを理…
事件番号: 昭和25(れ)1797 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法定刑の範囲内での実刑判決は、被告人にとって過重であっても直ちに同条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人Aは、特定の犯罪(詳細は判決文からは不明)について起訴され、事実審であ…
事件番号: 昭和30(あ)1232 / 裁判年月日: 昭和30年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不利益な供述を強制された事跡が認められない場合、憲法38条1項違反の主張は前提を欠き、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人A及びBが被告人として起訴された事案において、被告人Aの弁護人は、自己に不利益な供述を強制されたとして憲法違反を理由に上告を申し立てた。しかし、裁判所が記録を…