判旨
被告人の責任能力の有無(心神喪失・心神耗弱)の判断は、精神鑑定を必須とするものではなく、被告人の言動や態度のほか、被害者の供述等の諸資料を総合して認定することができる。
問題の所在(論点)
刑法39条の責任能力の有無を判断するにあたり、精神鑑定を経ることなく、犯行前後の客観的状況や被告人の供述等のみに基づいて心神耗弱等の否定を認定することが許されるか。
規範
責任能力(刑法39条)の判断において、酩酊の程度が心神喪失や心神耗弱に達していたか否かは、必ずしも専門家による精神鑑定に拘束されるものではない。裁判所は、犯行当時における被告人の動静、供述、態度、被害の顛末に関する関係者の供述など、一切の資料に基づき、経験則に照らして判断することが可能である。
重要事実
被告人両名は、本件犯行時に一定のアルコールを摂取した酩酊状態にあった。弁護人は、その酩酊が心神耗弱の程度に達していたと主張したが、原審は、自動車乗車から犯行時までに約1時間30分が経過しており、酩酊の最高潮から酔いが覚め始めていたこと、及び犯行時の具体的な言動や態度の推移から、是非善悪を弁別し、それに従って行動する能力が著しく減退した状態にはなかったと認定した。
あてはめ
被告人らは酩酊状態にはあったものの、前後不覚の「泥酔状態」ではなく、犯行までの経過時間(約1時間30分)からすれば酔いはある程度冷めていたといえる。また、犯行当時の被告人の動静や被害者の供述等の記録を精査しても、是非善悪を弁別する能力が「著しく減退」していたと認めるに足る事実はない。したがって、鑑定結果と整合しつつも、犯行前後の具体的行動等から責任能力を肯定した原判断は、経験則に反せず正当である。
結論
本件犯行当時、被告人らが心神耗弱の状況にあったとは認められない。
実務上の射程
司法試験の答案上、責任能力が論点となる事案において、精神鑑定の結果と犯行時の具体的行動(合目的的な行動や逃走の有無等)が矛盾する場合に、「鑑定に縛られず総合考慮で決する」という裁判所の裁量を基礎づける根拠として用いる。
事件番号: 昭和23(れ)1175 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
原審裁判所が所論検証並びに証人訊問をする旨を弁護人永田菊四郎に通知した形跡がないこと並びに同弁護人がその検証及び証人訊問に立会わなかつたこと及び原判決が右証人中Aの供述記載を証拠として採用したとしても右検証及び証人訊問には相弁護人が立会い、同証人に対して訊問をしているばかりでなく、原審第三回公判期日には右相弁護人の外弁…