被告人の当公廷における供述(自白)、被告人の司法警察員に対する供述調書(自白)と公判廷において証拠調の施行されていない被害未遂届とを証拠として窃盗未遂の犯罪事実を認定することは、刑訴第三一九条第二項に違反し同法第四一一条一号により破棄を免れない。
刑訴第四一一条一号にあたる一事例 ―被告人の自白だけで有罪とした判決の違法―
刑訴法317条,刑訴法319条2項,刑訴法411条1号
判旨
被告人の自白以外に証拠調べが行われていない証拠を事実認定に用いることは、憲法38条3項及び刑訴法319条2項が禁止する「自白のみによる有罪判決」に該当し、破棄事由となる。
問題の所在(論点)
公判において証拠調べがなされていない証拠を自白の補強証拠として採用し、事実認定の基礎とすることは、刑訴法319条2項(補強法則)に違反するか。
規範
憲法38条3項及び刑訴法319条2項は、被告人の自白のみを証拠として有罪とすることを禁じている(補強法則)。また、適正な事実認定を行うためには、公判において適法な証拠調べが施行された証拠に基づかなければならない。したがって、自白以外に証拠調べがなされていない場合には、実質的に自白のみを唯一の証拠として事実を認定したものと判断される。
重要事実
第一審判決は、被告人の犯行事実を認定する証拠として、(1)被告人の公判供述、(2)被害届、(3)司法警察員に対する供述調書、(4)法務府指紋係の回答書を掲げた。しかし、公判調書の記載によれば、(2)及び(4)の証拠については第一審公判において証拠調べが施行されていなかった。原審は、この第一審判決を維持した。
あてはめ
本件において、第一審が掲げた証拠のうち(2)及び(4)は公判において適法な証拠調べを経ていない。証拠調べを経ていない資料は証拠能力を欠き、事実認定の基礎とすることはできない。そうすると、実質的に残る証拠は被告人の自白((1)及び(3))のみとなる。したがって、第一審判決は被告人の自白を唯一の証拠として犯行事実を認定したものといわざるを得ず、補強法則に抵触する違法がある。
結論
被告人の自白を唯一の証拠として判示事実を認定した第一審判決、及びこれを維持した原判決には、刑訴法411条1号所定の破棄事由があるため、いずれも破棄を免れない。
実務上の射程
自白の補強証拠は、適法な証拠調べを経たものでなければならないという原則を明示したものである。答案上は、補強証拠の適格性や証拠調べの要否が問題となる場面で、適正手続の観点から引用すべき判例である。
事件番号: 昭和26(あ)4865 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決が被告人の自白を証拠として引用せず、証人の供述や押収品を証拠としている場合には、自白のみによる有罪判決を禁じた憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が有罪とされた判決に対し、弁護人は「本件は自白のみによる有罪判決であり憲法38条3項に違反する」旨を主張して上告した。しかし…