判旨
業務横領罪において、身分なき共犯者が加功した場合、刑法65条の規定により共犯として成立するが、科刑については同条2項に基づき通常の横領罪(単純横領罪)の刑を科すべきである。
問題の所在(論点)
刑法65条の解釈に関し、業務横領罪という「身分によって刑の軽重がある罪」に対し、身分なき者が加功した場合の科刑はどうあるべきか。刑法65条1項と2項の関係が問題となる。
規範
刑法65条1項は共犯の成立を規定し、同条2項は刑の軽重がある場合の科刑を規定する。業務横領罪(253条)のように、特定の身分によって刑の重軽がある罪に身分なき者が加功した場合、共犯は成立する(1項)ものの、科刑については重い身分がないため、通常の刑(単純横領罪の刑)を科すべきである。
重要事実
被告人は、身分関係を有しない立場で業務横領等の犯罪行為に加功したとして起訴された。第一審判決では業務横領罪の成立が認められたが、被告人側は、身分なき共犯者の加功行為に対しては通常の刑(単純横領罪の刑)を科すべきである旨を主張し、上告した。
あてはめ
本件において、被告人は業務横領罪の身分を有しないが、当該犯罪に加功している。刑法65条2項は「身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には、通常の刑を科する」と定めている。業務横領罪は単純横領罪に対し業務者という身分により刑が加重される性質を持つため、身分なき者には同条2項が適用され、単純横領罪の刑を科すのが相当である。ただし、本件では他の余罪(横領等)も存在するため、直ちに判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
結論
身分なき共犯者が業務横領罪に加功した場合、業務横領罪の共犯が成立するが、科刑については刑法65条2項により、単純横領罪の刑を科すべきである。
実務上の射程
刑法65条1項を「構成的身分」、同2項を「加減的身分」とする通説的見解を支持する判例として位置づけられる。答案作成上、業務横領罪への非占有者の加功については、まず1項により共犯の成立を認め、次いで2項により科刑を単純横領罪に限定する二段構えの論述を行う際の根拠となる。
事件番号: 昭和32(あ)609 / 裁判年月日: 昭和35年6月24日 / 結論: 棄却
原判決は第一審判決をその科刑重きにすぎるとして破棄自判し、被告人の犯罪事実である第一審判決判示第一の各所為及び第三の所為につき、いずれも刑法第二五三条(第三の所為については更に同第六〇条をも適用)の業務上横領罪の規定を適用しているが、右第三の所為(註。業務上横領に加功した非業務者の加功行為)につき刑法二五三条を適用した…