判旨
非占有者が業務上占有者と共謀して横領を行った場合、刑法65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立し、同条2項により業務上の身分がない者には単純横領罪の刑を科すべきである。
問題の所在(論点)
業務上横領罪において、業務上の身分を有しない者が身分者と共謀して横領に及んだ場合、刑法65条1項および2項をどのように適用すべきか。
規範
1. 非占有者が占有者(身分者)の実行行為に共同して加功した場合には、刑法65条1項により共犯(共同正犯・教唆・幇助)が成立する。 2. もっとも、同条2項は「身分によって特に刑の軽重があるとき」には「通常の刑」を科すと定めているため、業務上の身分を有しない者には、同条2項により単純横領罪の刑を科すべきである。
重要事実
会計課長Aは、その業務上公金を保管していた。被告人Bは、Aが保管する金員が公金であるかもしれないと認識(未必的故意)しながら、巨額の借入れをAに懇請し、高利の支払を約束した。Aはこの懇請に応じ、業務上保管する公金をBに貸し付けた。Bには公金を業務上保管すべき身分はなかった。
あてはめ
1. 被告人Bは、Aが業務上保管する公金であることを知りながら貸付けを懇請し、Aとの間に不法な貸借の謀議(共謀)が認められるため、刑法65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立する。 2. もっとも、Bには「業務上保管する」という加重的な身分がないため、同条2項により、業務上の身分がない場合に適用される単純横領罪(通常の刑)の限度で刑を科すのが相当である。
結論
被告人Bには業務上横領罪の共同正犯が成立するが、科刑については刑法65条2項により単純横領罪の刑をもって処断する。
実務上の射程
刑法65条の解釈において、1項を「共犯の成立」、2項を「刑の個別化」に関する規定と解する「1項=真正身分犯、2項=不真正身分犯」の枠組みを前提としている。答案上は、まず1項で共同正犯の成立を認め、次いで2項により科刑を単純横領罪に限定する二段構えの論証に用いる。
事件番号: 昭和30(あ)423 / 裁判年月日: 昭和30年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務横領罪において、身分なき共犯者が加功した場合、刑法65条の規定により共犯として成立するが、科刑については同条2項に基づき通常の横領罪(単純横領罪)の刑を科すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、身分関係を有しない立場で業務横領等の犯罪行為に加功したとして起訴された。第一審判決では業務横領罪…