判旨
起訴後に作成された検察官面前調書であっても、適法な証拠能力を有し、原判決の認定した犯罪の動機に合理的な証拠上の根拠がある限り、証拠裁判主義に反しない。
問題の所在(論点)
起訴後に作成された供述調書を証拠として事実認定(犯罪の動機等)に用いることの適法性、および複数の証拠を総合して認定した事実が「虚無の証拠による認定」に該当するか否か。
規範
刑事訴訟法における証拠裁判主義に基づき、事実の認定は証拠能力があり、かつ適法な証拠調べを経た証拠によらなければならない。起訴後に作成された供述調書であっても、その成立の真正や任意性が認められ、内容に合理性が認められる限り、証拠として採用することは許容される。また、事実認定(特に動機の認定)において、記録上の複数の証拠を総合して合理的に導き出せるのであれば、虚無の証拠による認定とは評価されない。
重要事実
被告人は起訴された後、昭和28年10月21日に検察官に対し第一回目の供述を行い、その内容が供述調書として記録された。原判決はこの「起訴後第一回検察官面前調書」を証拠の一つとして採用し、本件犯罪の動機を認定した。これに対し弁護人は、当該調書が起訴前の調書と混同されており違法であること、および原判決が虚無の証拠によって動機を認定したものであると主張して上告した。
あてはめ
まず、原判決が引用した調書は、日付および記録上の綴りから、起訴後の昭和28年10月21日に作成されたものであることが明白であり、起訴前の調書との取り違えは存在しない。次に、証拠の評価について検討するに、原判決が挙げた各証拠を記録に照らして吟味すれば、これらを総合的に関連付けることによって、判示のような犯罪の動機を導き出すことが可能である。したがって、証拠の裏付けを欠いたまま主観的に事実を認定したという違法は認められない。
結論
起訴後の供述調書を証拠として犯罪の動機を認定することは適法であり、記録上の証拠を総合して得られた事実認定に証拠裁判主義違反の過誤はない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
起訴後の検察官面前調書の証拠能力自体は否定されない。実務上、公判開始後の供述の証拠採用が問題となる場面で、その特定と内容の合理性を論証する際の参考となる。また、事実誤認の主張に対し、証拠の総合評価によって認定が可能であることを示す「総合考慮」の有効性を裏付ける事例といえる。
事件番号: 昭和43(あ)66 / 裁判年月日: 昭和43年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】殺意のような主観的構成要件要素については、被告人の自白のみならず、判決に列記された他の証拠を総合して認定することができる。これにより、自白のみを証拠として有罪とすることを禁じた憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が殺人罪等の罪に問われた事案において、第一審判決は被告人の自白を証拠…