判旨
憲法14条の法の下の平等は、犯罪行為を行った者がその処罰を免れる根拠となるものではなく、被害者の行為が不当であっても被告人の刑事責任は否定されない。
問題の所在(論点)
被害者に違法または不当な行為(スパイ行為等)があった場合、その被害者に対する加害行為を処罰することが、憲法14条の平等原則に違反するか。
規範
憲法14条1項の法の下の平等は、事案の性質に応じた合理的な差別を許容するものであり、個別の犯罪事実に対する刑罰権の行使において、被害者側に何らかの非違行為があったとしても、それによって直ちに被告人に対する処罰が憲法違反となるものではない。
重要事実
被告人Aらは、被害者Bに対して犯罪行為を行ったとして起訴された。被告人側は、被害者Bが行っていたスパイ行為こそが被告人らの憲法上保障された権利を侵害するものであり、処罰されるべきはBであると主張した。そのため、Bの行為を不問に付したまま被告人らを処罰することは、憲法14条の平等原則に反し、不当であると訴えて上告した。
あてはめ
被告人らは被害者の不当性を理由に自らの正当性を主張するが、これは刑事裁判における証拠の取捨選択や事実認定の是非(事実誤認の主張)に帰着するものである。被害者の行為が仮に不当であったとしても、被告人自身の犯罪成立を否定する法的根拠にはならず、適正な手続きに基づき有罪と判断された以上、これを処罰することは憲法14条の精神に反する不合理な差別にはあたらない。
結論
被告人らの行為を処罰することは憲法14条に違反せず、上告は棄却される。
実務上の射程
被害者側の落ち度や不法行為を理由に、被告人の処罰自体を憲法違反(平等原則違反)として争うことは困難であることを示す。量刑上の考慮材料にはなり得るが、犯罪の成否や公訴提起の有効性を憲法論で覆す事案ではないことを確認する際に参照される。
事件番号: 昭和42(あ)3025 / 裁判年月日: 昭和43年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者のうち一部が起訴されず、またはより軽く処罰されたとしても、特定の被告人のみが起訴され、あるいは重く処罰されることは、直ちに憲法14条の法の下の平等に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人は共犯事件に関与したが、他の共犯者は起訴を免れ、あるいは被告人よりも軽い処罰を受けるにとどまった。…
事件番号: 昭和27(あ)6762 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する公平な裁判所の趣旨は、個々の事件の内容や実質が当事者から見て不当な裁判を指すものではなく、また思想的転向の有無等による量刑上の差別がない限り、裁判官の良識に従った判断は同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において第一審判決を受けた後、検察官が控訴した。原審…
事件番号: 昭和56(あ)1044 / 裁判年月日: 昭和57年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条、28条、31条違反の主張が、実質的に事実誤認や単なる法令違反をいうものである場合、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、憲法14条(法の下の平等)、28条(労働基本権)、31条(適正手続の保障)違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、…
事件番号: 昭和33(あ)1376 / 裁判年月日: 昭和34年2月26日 / 結論: 棄却
控訴審が、第一審判決判示第二および第三(一)(二)の事実認定ならびに法令の適用には誤がないとして是認し、ただ同判決第一事実は犯罪の証明がないとして破棄自判する場合において、あらためて右判決の判示第二および第三(一)(二)と同一事実を認定判示することは違法である。
事件番号: 昭和43(あ)2733 / 裁判年月日: 昭和44年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が組織暴力団に属している事実や前科がある事実を量刑上の情状として参酌することは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は刑事裁判において有罪判決を受けたが、その際、裁判所が被告人が組織暴力団に属していたこと、および前科が8犯あることを理由として刑を量刑した。こ…