判旨
憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗の恐れがなく中立公正な裁判所を指し、量刑不当や審理不尽の主張は当然には上告理由としての憲法違反を構成しない。
問題の所在(論点)
量刑不当や審理不尽の主張が、憲法37条1項の「公平な裁判所の裁判」を受ける権利の侵害として、刑訴法405条の上告理由となり得るか。
規範
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、裁判所が構成されるにあたり、偏頗の恐れがある等の主観的または客観的な事情がないことを意味する。単なる量刑不当や審理不尽の主張は、刑罰の程度に関する裁量や事実認定の当否を争うものに過ぎず、直ちに公平な裁判所による裁判を受ける権利の侵害(憲法違反)を構成するものではない。
重要事実
被告人が、量刑不当および審理不尽を理由として上告を申し立てた事案。弁護人は、これらの事由が刑訴法405条の上告理由に該当すると主張し、あわせて憲法37条1項の「公平な裁判所」の趣旨に照らして判断を求めた。
あてはめ
本件の上告趣意は、いずれも量刑の不当または審理の不尽を主張するにとどまる。これらは刑事訴訟法が定める適正な手続の中で判断されるべき事実認定や裁量の範囲内の問題である。したがって、裁判所の構成や中立性に欠陥があることを指す「公平な裁判所」の概念に反する事態が生じているとは認められない。記録に照らしても、職権で破棄すべき著しい正義に反する事由(刑訴法411条)は見当たらない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
司法試験においては、裁判所の構成(除斥・忌避等)や裁判官の予断が問題となる場面で、憲法37条1項の「公平な裁判所」の定義を引用する際の基礎となる判例である。量刑への不満を憲法問題へすり替える主張を排斥する論理としても機能する。
事件番号: 昭和25(あ)1163 / 裁判年月日: 昭和25年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗の恐れのない組織構成を有する裁判所を指し、個々の事件における具体的裁判内容の公平性までも保障するものではない。 第1 事案の概要:被告人は、有価証券偽造罪及び詐欺罪に問われ、第一審において有罪判決(一部無罪)を受けた。被告人側は、第一審の量刑が過酷であ…
事件番号: 昭和27(あ)5228 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所が構成において偏頗でなく、かつ、不公平の恐れのない手続によって審判することをいい、検察官の主張を採用したのみでは直ちに不公平な裁判には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、原審(控訴審)が検察官の控訴趣意書における主張を採用して判断を下…
事件番号: 昭和28(あ)4639 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が定める「公平な裁判所」とは、裁判官が被告人と個人的な利害関係を持つ等の不偏不党性を欠く状態にない組織を指し、当事者が主観的に不公平と感じるか否かによって決まるものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として、憲法37条1項の保障する「公平な裁判所…
事件番号: 昭和27(あ)6469 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯情の類似した犯人の間で処断刑に差異が生じても、直ちに憲法14条の法の下の平等に反するものではない。また、憲法37条1項にいう公平な裁判所とは、その組織構成において偏頗の恐れのない裁判所を指す。 第1 事案の概要:上告人は、犯情の類似した他の犯人と比較して、自らに科された刑罰が重いこと(量刑の不均…