判旨
憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所が構成において偏頗でなく、かつ、不公平の恐れのない手続によって審判することをいい、検察官の主張を採用したのみでは直ちに不公平な裁判には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判所が検察官の控訴趣意書の内容を採用して判断を行うことが、憲法37条1項にいう「公平な裁判所」による裁判に違反するか。また、事実誤認の主張が適法な上告理由となるか。
規範
憲法37条1項にいう「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所がその構成において偏頗(へんぱ)でなく、かつ、不公平の恐れのない訴訟手続によって審判することをいう(昭和23年5月5日大法廷判決参照)。単に裁判所が一方当事者(検察官)の主張を採用したことや、事実誤認の可能性があることだけでは、直ちに同条違反となるものではない。
重要事実
被告人は、原審(控訴審)が検察官の控訴趣意書における主張を採用して判断を下したことについて、一方的かつ独断的であり、「公平な裁判所の裁判を受ける権利」を保障した憲法37条1項に違反するとして上告した。なお、具体的な犯罪事実や原審の判断内容の詳細は、判決文からは不明である。
あてはめ
憲法37条1項の法意に照らせば、原判決が検察官の控訴趣意書の所論を採用したことをもって不公平な裁判ということはできない。記録を精査しても、原判決が一方的・独断的に控訴趣意書を採用したとは認められず、裁判所の構成や手続自体に不公平な点は存在しない。被告人の主張は、実質的には事案の誤認をいうものであり、刑事訴訟法405条所定の適法な上告理由に当たらない。
結論
本件における原審の判断手法に憲法37条1項違反はなく、不公平な裁判とはいえない。また、事実誤認の主張は適法な上告理由とならないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和25(あ)1163 / 裁判年月日: 昭和25年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗の恐れのない組織構成を有する裁判所を指し、個々の事件における具体的裁判内容の公平性までも保障するものではない。 第1 事案の概要:被告人は、有価証券偽造罪及び詐欺罪に問われ、第一審において有罪判決(一部無罪)を受けた。被告人側は、第一審の量刑が過酷であ…
実務上の射程
「公平な裁判所」の意義を問う憲法・刑訴法融合問題において、裁判官の忌避等だけでなく判決内容の不偏性を争う際の基礎となる判例である。ただし、単なる認定への不服は事実誤認の問題にすぎず、憲法問題にはならないとする限界を示している。
事件番号: 昭和30(あ)2372 / 裁判年月日: 昭和30年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗の恐れがなく中立公正な裁判所を指し、量刑不当や審理不尽の主張は当然には上告理由としての憲法違反を構成しない。 第1 事案の概要:被告人が、量刑不当および審理不尽を理由として上告を申し立てた事案。弁護人は、これらの事由が刑訴法405条の上告理由に該当…
事件番号: 昭和28(あ)4639 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が定める「公平な裁判所」とは、裁判官が被告人と個人的な利害関係を持つ等の不偏不党性を欠く状態にない組織を指し、当事者が主観的に不公平と感じるか否かによって決まるものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として、憲法37条1項の保障する「公平な裁判所…
事件番号: 昭和27(あ)6469 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯情の類似した犯人の間で処断刑に差異が生じても、直ちに憲法14条の法の下の平等に反するものではない。また、憲法37条1項にいう公平な裁判所とは、その組織構成において偏頗の恐れのない裁判所を指す。 第1 事案の概要:上告人は、犯情の類似した他の犯人と比較して、自らに科された刑罰が重いこと(量刑の不均…