判旨
控訴趣意書提出期間経過後に提出された書面に、当初の控訴趣意書に含まれていない新たな控訴理由が記載されている場合、控訴裁判所はその理由について判断を示す義務を負わない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法第376条に基づき定められた控訴趣意書の提出期間を経過した後に、新たな控訴理由を補充する書面が提出された場合、控訴裁判所はその内容について判決で判断を示す必要があるか。
規範
刑事訴訟法第376条第1項に規定される控訴趣意書提出期間の経過後に提出された書面(控訴趣意書補充申立書等)に、期間内に提出された控訴趣意書に包含されない新たな控訴理由が記載されている場合、裁判所はこれに対して判断を与えるべき義務はない。
重要事実
弁護人が控訴趣意書提出期間の経過後に「控訴趣意書補充申立」と題する書面を提出した。当該書面には、期間内に提出された当初の控訴趣意書には含まれていない新たな控訴理由が記載されていた。
あてはめ
本件で提出された補充申立書は、法定の提出期間経過後に提出されたものである。かつ、その内容は既提出の控訴趣意書の趣旨を単に補足するものではなく、当初の趣意書には含まれていない独立した控訴理由を構成するものであった。したがって、適法な控訴理由の提示がなされたとはいえず、裁判所の判断対象から除外される。
結論
控訴裁判所は、法定期間外に提出された新たな控訴理由については判断を示す必要はなく、控訴棄却等の決定をすることは正当である。
実務上の射程
控訴趣意書提出期間の法的性質が失権的であることを確認した判例である。実務上、期間経過後の補充は、当初の趣意書にある理由を敷衍する「補充」に留まる限りで事実上の考慮対象となるが、全く別の論点を追加しても裁判所に判断義務は生じない。答案上は、控訴審の構造(事後審・期間制限)を論じる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和28(し)40 / 裁判年月日: 昭和28年8月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の提出遅延がやむを得ない事情に基づく場合に、期間内に差し出されたものとして審判するか否かは、控訴裁判所の裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人は、控訴趣意書の提出期間の最終日が昭和28年2月27日と定められ、適法な通知を同年1月30日に受けていた。しかし、被告人は右期間を漫然と徒過し、…
事件番号: 昭和28(あ)3703 / 裁判年月日: 昭和30年5月11日 / 結論: 棄却
一 被告人は所持の麻薬がもはや薬効のないものと信じていた旨の主張は、単に麻薬所持の犯意を否認するものに過ぎないものであつて、刑訴第三三五条第二項の主張に当らない。 二 原審において戸田弁護人に対し控訴趣意書提出最終日指定の通知をしなかつたのは、被告人に対して右通知をなした当時、同弁護人については未だ控訴審における弁護人…