記録を調べると所論の控訴趣意書補充情状陳述書は控訴趣意書提出期間経過後である昭和三〇年一月二一日原審に提出されているから控訴趣意書としてそれに包含されている事項に対する判断をするには及ばない。のみならずその趣旨はさきに所定期間内に提出された控訴趣意書の内容を補充するにすぎないので控訴趣意書に対する判断において当然判断されており、特にこれについて判断する必要はない。
控訴趣意書提出期間経過後に提出された控訴趣意書補充書に対し判決において判断を要するか
刑訴法376条,刑訴法392条,刑訴規則236条,刑訴規則240条,刑訴規則246条
判旨
控訴趣意書提出期間経過後に提出された「控訴趣意書補充情状陳述書」については、裁判所はこれに含まれる事項に対して判断をする義務を負わない。また、既に提出された控訴趣意書を補充する内容にすぎない場合には、元の控訴趣意書に対する判断があれば足り、特段の判断を示さなくても違法ではない。
問題の所在(論点)
控訴趣意書の提出期間経過後に提出された補充的な書面について、控訴審裁判所は判決において個別に判断を示す義務を負うか(刑事訴訟法376条1項、389条、405条関連)。
規範
刑事訴訟法に基づく控訴趣意書の提出期間は、訴訟手続の迅速かつ円滑な進行を確保するためのものである。したがって、提出期間経過後に提出された書面(控訴趣意書補充情状陳述書等)に記載された事項について、裁判所は特段の判断を示す必要はない。ただし、その内容が既になされた控訴趣意を実質的に補充するに留まる場合は、元の控訴趣意に対する判断をもって足りる。
重要事実
被告人の弁護人は、第一審判決に対し控訴を提起したが、控訴趣意書の提出期間が経過した後の昭和30年1月21日に「控訴趣意書補充情状陳述書」を原審(控訴審)に提出した。原審はこの補充陳述書について特段の判断を示さずに判決を下した。これに対し、弁護人は原審の判断不尽を理由として訴訟法違反を主張し、上告した。
あてはめ
本件の「控訴趣意書補充情状陳述書」は、記録によれば控訴趣意書の提出期間経過後に提出されたものである。法が期間を定めている以上、裁判所は期間外に提出された事項について判断の義務を負うものではない。さらに、当該書面の内容を検討すると、先に所定期間内に提出された控訴趣意書の内容を具体的に補充する性質のものにすぎない。したがって、既になされた控訴趣意に対する判断が示されていれば、補充的な内容について個別に説示しなくても、実質的な判断漏れがあるとは認められない。
結論
原審が提出期間経過後の補充陳述書について特段の判断を示さなかったことに違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、控訴趣意書の提出期間(刑事訴訟規則236条)の遵守が極めて重要であることを再認させる判例である。期間経過後の主張は原則として裁判所の判断対象外となるが、職権発動を促す事実(刑訴法392条2項)として考慮される可能性はある。答案上は、理由不備や判断遺脱を論じる際の排斥論理として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)2350 / 裁判年月日: 昭和30年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書提出期間経過後に提出された書面に、当初の控訴趣意書に含まれていない新たな控訴理由が記載されている場合、控訴裁判所はその理由について判断を示す義務を負わない。 第1 事案の概要:弁護人が控訴趣意書提出期間の経過後に「控訴趣意書補充申立」と題する書面を提出した。当該書面には、期間内に提出され…