所論補充控訴趣意書は、趣意書提出期間経過後の提出に係るものであるばかりでなく、その内容はその名の示すとおり基本の控訴趣意書中の事実誤認、量刑不当の主張の部分を補充したに過ぎないもので、何等独立した新らたな事項の主張でないこと記録上明白であるから、基本の控訴趣意書に包含されている事項につき逐一判断を与えた以上控訴の趣意に対する判断を遺脱したものとはいえない。
基本の控訴趣意書以外に、独立した新らたな主張のない補充控訴趣意書に対する判断の要否
刑訴法392条,刑訴規則246条
判旨
控訴審において、提出期間経過後に提出された補充控訴趣意書が基本の控訴趣意書に含まれる事項を補充するものである場合、基本の控訴趣意書に対して判断を示せば、判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱(刑訴法392条参照)には当たらない。
問題の所在(論点)
刑訴法392条1項に関連し、期間経過後に提出された補充控訴趣意書の内容が基本の控訴趣意書の範囲内である場合に、これに対して個別に判断を示さないことが「判断の遺脱」に該当するか。
規範
控訴審において、控訴趣意書提出期間経過後に提出された補充控訴趣意書であっても、その内容が基本となる控訴趣意書に記載された事項を補充するに過ぎず、独立した新たな事項を主張するものでない場合には、裁判所が基本の控訴趣意書に包含される事項につき逐一判断を示した以上、控訴の趣意に対する判断を遺脱したものとは解されない。
重要事実
被告人側は、控訴審において基本となる控訴趣意書を提出した後、提出期間を経過してから「補充控訴趣意書」を提出した。この補充書の内容は、基本の控訴趣意書ですでに主張されていた事実誤認および量刑不当の主張を補強・補充するものであった。控訴審判決は基本の控訴趣意書に対しては判断を示したが、期間経過後の補充書に特化した個別の判断を示さなかったため、弁護人はこれを判断遺脱の訴訟法違反であるとして上告した。
あてはめ
本件の補充控訴趣意書は、期間経過後に提出されたものであることに加え、その内容は事実誤認や量刑不当という基本の控訴趣意書における主張を補充する趣旨であった。したがって、判決において基本の控訴趣意書に包含されている事項について網羅的に判断が下されている以上、実質的に補充書の内容も含めて検討されているといえる。ゆえに、補充書独自の判断を欠いたとしても、手続上の違法は存在しないと解される。
結論
控訴の趣意に対する判断を遺脱したものとはいえず、訴訟法違反には当たらない。
実務上の射程
控訴審の判断遺脱を論じる際、期間経過後の補充主張に対する裁判所の判断義務の範囲を画定する基準として機能する。主張の内容が既存の論点の補充にとどまる限り、既存の論点への判断をもって足りるとする実務上の運用を支える判例である。
事件番号: 昭和26(あ)1394 / 裁判年月日: 昭和27年12月16日 / 結論: 棄却
原判決が控訴趣意に対する判断を一部遺脱しても右控訴趣意自体理由がないときは刑訴四一一条第一号に当らない。