原判決が控訴趣意に対する判断を一部遺脱しても右控訴趣意自体理由がないときは刑訴四一一条第一号に当らない。
控訴趣意に対する判断を一部遺脱した控訴判決と刑訴法第四一一条。
刑訴法392条1項,刑訴法411条,刑訴規則246条
判旨
原判決に控訴趣意に対する判断遺脱がある場合であっても、当該控訴趣意自体に理由がないときは、刑訴法411条1号(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)には当たらず、上告棄却の対象となる。
問題の所在(論点)
控訴審判決が被告人の控訴趣意に対する判断を一部遺脱していた場合、直ちに刑訴法411条1号の「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」として破棄事由となるか。
規範
控訴審判決において控訴趣意に対する判断の遺脱(不尽)があったとしても、その遺脱された趣意自体に理由がないことが明らかな場合には、実質的に判決の結論に影響を及ぼすものではないため、刑訴法411条1号(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)を適用して原判決を破棄すべき事由には当たらない。
重要事実
被告人AおよびBが上告した事案。被告人Aに関して、原判決(控訴審判決)には弁護人が主張した控訴趣意に対する判断を一部遺脱している不備があった。しかし、その判断が漏れた控訴趣意の内容自体を検討したところ、主張としての正当性(理由)が認められないものであった。
あてはめ
本件において、原判決が被告人Aの控訴趣意の一部について判断を示していない事実は認められる。しかし、当該控訴趣意の内容を精査すると、それ自体が理由のない主張である。そうであれば、仮に判断を示していたとしても結論が左右されることはなく、審理の適正や判決の妥当性を著しく害するものとはいえない。したがって、職権破棄事由を定める刑訴法411条を適用する必要性はないと判断される。
結論
控訴趣意に対する判断遺脱があっても、その趣意自体に理由がないときは、判決に影響を及ぼすべき法令の違反には当たらない。本件各上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所による判断遺脱という手続的違法があっても、結論の妥当性に影響しない限り、上告審での救済対象(職権破棄事由)とはならないことを示した。実務上は、形式的な判断漏れのみを理由として破棄を求めることは困難であり、当該判断漏れが結論を覆し得る実質的な重要性を持つことを主張する必要がある。
事件番号: 昭和25(あ)623 / 裁判年月日: 昭和25年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法411条は、405条所定の上告理由がない場合であっても、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる場合に、上告裁判所が職権で判決を破棄できることを定めた規定である。 第1 事案の概要:弁護人が上告を申し立てたが、その趣意は刑訴法405条が規定する上告理由(憲法違反または判例違反)に…
事件番号: 昭和26(れ)1391 / 裁判年月日: 昭和26年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない事案について、記録を精査しても同法411条の職権破棄事由を適用すべきものとは認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人側は、原判決に対して上告を申し立て、弁護人が上告趣意を提出したが、最高裁判所はその内容を検討した結果…