判旨
控訴趣意書の提出遅延がやむを得ない事情に基づく場合に、期間内に差し出されたものとして審判するか否かは、控訴裁判所の裁量に属する。
問題の所在(論点)
控訴趣意書が提出期間を徒過して提出された場合において、刑事訴訟規則238条に基づき期間内の提出があったものとして審判しなかった裁判所の判断に、憲法32条(裁判を受ける権利)違反等の違法があるか。
規範
刑事訴訟規則238条の規定により、控訴趣意書の提出遅延がやむを得ない事情に基づくものと認められる場合に、これを期間内に差し出されたものとみなして実体審理を行うか否かは、控訴裁判所の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
被告人は、控訴趣意書の提出期間の最終日が昭和28年2月27日と定められ、適法な通知を同年1月30日に受けていた。しかし、被告人は右期間を漫然と徒過し、同年3月16日になってようやく控訴趣意書を提出した。原裁判所は、刑訴法386条1項1号に基づき、期間内に控訴趣意書が提出されなかったことを理由として控訴棄却の決定をした。
あてはめ
本件において、被告人は提出期間に関する適法な通知を受けていたにもかかわらず、特段の事情もなく「漫然と」期間を徒過している。このような状況下で、提出期限から半月以上遅れて提出された趣意書を、規則238条を適用して有効なものと扱わなかった裁判所の判断は、裁量の範囲内にある適法なものである。したがって、適法な手続に基づく控訴棄却は憲法32条にも違反しない。
結論
控訴趣意書の遅延提出を有効として審判しなかった原決定は正当であり、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
提出期間徒過後の控訴趣意書について、裁判所が救済措置(規則238条)を講じないことは原則として裁量の範囲内であり、被告人側の過失(漫然たる徒過)がある場合には、これを理由とする控訴棄却は適法であるとする実務上の基準を示している。
事件番号: 昭和57(し)72 / 裁判年月日: 昭和57年6月8日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和28(し)67 / 裁判年月日: 昭和28年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の最終提出日直前に別罪で逮捕勾留されたために提出が遅れた場合であっても、刑訴法386条1項1号に基づく控訴棄却決定は、被告人の弁護権行使を不当に制限するものではなく、憲法13条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を提起したが、控訴趣意書の最終提出日の2日前に別罪により逮捕勾留…
事件番号: 昭和38(し)15 / 裁判年月日: 昭和38年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の提出遅延に関し、所定の期間内に提出がなかった場合に「上申書」と題する書面を提出したとしても、それを適法な控訴趣意書とみなすことはできず、提出遅延を正当化する「やむを得ない事情」も認められない。 第1 事案の概要:控訴人が、所定の提出期間内に控訴趣意書を提出しなかった。期間徒過後に「上申…
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事件番号: 昭和27(し)21 / 裁判年月日: 昭和28年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴棄却決定に対する異議申立期間を徒過した場合であっても、自己等の責に帰すべからざる事由があるときは、上訴権回復の規定を準用して異議権の回復を請求できるが、その請求なしに単になされた異議申立は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は麻薬取締法違反で有罪判決を受け控訴したが、指定された期間内に控訴…