判旨
送達報告書により控訴趣意書提出最終日の通知書が適法に送達された事実が認められる場合、通知を受けていないことを前提とする憲法32条違反の主張は採用されない。
問題の所在(論点)
送達報告書に送達の記録がある場合において、通知を現実に受領していない旨の主張に基づき、憲法32条(裁判を受ける権利)違反を認めることができるか。
規範
訴訟手続における通知の適否は、執行吏代理等の作成した送達報告書等の公文書の記載内容に基づき判断され、当該通知が適法に到達したと認められる場合には、その通知を前提とする手続保障(憲法32条)は尽くされたものと解する。
重要事実
申立人は、麻薬取締法違反等被告事件において、控訴趣意書の提出最終日の通知書を受け取っていないと主張し、裁判を受ける権利(憲法32条)の侵害を理由に特別抗告を申し立てた。しかし、記録によれば、東京地方裁判所執行吏代理作成の送達報告書には、昭和27年7月11日に当該通知書が申立人へ送達された旨が記載されていた。
あてはめ
本件では、執行吏代理作成の送達報告書という公的な証明資料により、控訴趣意書提出最終日の通知が昭和27年7月11日になされた事実が明確に認められる。これに対し、申立人が同通知書を受け取っていないと認めるべき資料は存在しない。したがって、適法な通知がなされた以上、手続上の瑕疵は認められず、通知の欠落を前提とする憲法違反の主張は、前提事実を欠くものと評価せざるを得ない。
結論
適法な送達の事実が認められる以上、憲法32条違反の主張には理由がなく、本件特別抗告は棄却される。
実務上の射程
送達報告書の証拠力を重視し、手続保障の有無を形式的・客観的な送達の事実から判断する実務上の運用を追認したものである。答案上は、告知・聴聞の機会の有無が争点となる場合に、送達等の客観的事実があれば手続的権利の侵害を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和57(し)72 / 裁判年月日: 昭和57年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の差出最終日を指定した後に選任された弁護人に対し、改めて当該最終日の通知を行う必要はない。この運用は、憲法31条、32条、37条1項のいずれにも違反しない。 第1 事案の概要:本件において、裁判所は控訴趣意書の差出最終日を指定したが、その後、弁護人選任届が提出された。新たに選任された弁護…
事件番号: 昭和27(し)21 / 裁判年月日: 昭和28年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴棄却決定に対する異議申立期間を徒過した場合であっても、自己等の責に帰すべからざる事由があるときは、上訴権回復の規定を準用して異議権の回復を請求できるが、その請求なしに単になされた異議申立は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は麻薬取締法違反で有罪判決を受け控訴したが、指定された期間内に控訴…
事件番号: 昭和32(す)390 / 裁判年月日: 昭和32年5月29日 / 結論: 棄却
上告棄却決定の謄本が、本人と弁護人との双方に日を異にし本人に先に送達された場合における異議申立の期間は、本人に送達された日から起算すべきである。
事件番号: 昭和28(し)68 / 裁判年月日: 昭和28年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は、国民が裁判所以外の機関によって終局的に裁判されないことを保障するものであり、訴訟法が定める特定の管轄権を有する裁判所で裁判を受ける権利までを保障するものではない。 第1 事案の概要:弁護人が、被告人の受ける裁判について、訴訟法上の管轄権等に関する違法があるとして、憲法32条違反を理由…
事件番号: 昭和28(し)67 / 裁判年月日: 昭和28年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の最終提出日直前に別罪で逮捕勾留されたために提出が遅れた場合であっても、刑訴法386条1項1号に基づく控訴棄却決定は、被告人の弁護権行使を不当に制限するものではなく、憲法13条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を提起したが、控訴趣意書の最終提出日の2日前に別罪により逮捕勾留…