判旨
控訴棄却決定に対する異議申立期間を徒過した場合であっても、自己等の責に帰すべからざる事由があるときは、上訴権回復の規定を準用して異議権の回復を請求できるが、その請求なしに単になされた異議申立は不適法である。
問題の所在(論点)
控訴棄却決定に対する異議申立期間を徒過した場合において、上訴権回復の規定を準用して救済を受けることができるか。また、そのための手続として単なる異議申立で足りるか。
規範
高等裁判所がした控訴棄却の決定に対し、被告人又は代人の責に帰することができない事由により法定の異議申立期間内に申立ができなかった場合には、刑事訴訟法362条以下の規定(上訴権回復の請求)が準用される。したがって、救済を受けるためには、期間内に異議権回復の請求をすると同時に、異議の申立を履践しなければならない。
重要事実
抗告人は麻薬取締法違反で有罪判決を受け控訴したが、指定された期間内に控訴趣意書を提出しなかったため、原審は控訴棄却の決定をした。当該決定の謄本は、抗告人の保釈制限住居地にて同居人が受領し適法に送達された。抗告人は、自己の責に帰すべからざる事由により控訴趣意書提出期間および決定に対する異議申立期間を遵守できなかったと主張し、法定の異議申立期間(3日間)を経過した後に、異議権回復の請求を行うことなく単に異議の申立のみを行った。
あてはめ
本件では、決定謄本の送達から3日間の異議申立期間を経過した後の申立であり、形式的に不適法である。抗告人は自己の責によらない事由を主張するが、刑訴法362条等の準用に基づき「異議権回復の請求」を同時に行うべきであった。しかるに、抗告人は回復請求の手続を何ら経ることなく単に異議のみを申し立てており、訴訟法上適正な手続を履践していないといえる。そのため、期間徒過による不利益を免れることはできない。
結論
異議権回復の請求を伴わない期間徒過後の異議申立は不適法であり、これを棄却した原決定は正当である。特別抗告を棄却する。
事件番号: 昭和27(し)42 / 裁判年月日: 昭和33年5月26日 / 結論: 棄却
刑訴規則第二一六条、第二二二条の規定は第一審における刑訴第二八四条、第二八五条第一、二項にあたる事件に関するものであつて、控訴審には準用のない規定である
実務上の射程
控訴棄却決定(刑訴法386条)に対する異議申立(同385条2項、428条)についても、上訴権回復(362条)の法理が及ぶことを示した。実務上、不変期間徒過後の救済を求める際は、単なる上訴申立等ではなく、回復請求を併せて行う必要があるという手続的厳格性を強調する事案で引用すべきである。
事件番号: 昭和27(し)69 / 裁判年月日: 昭和28年12月26日 / 結論: 棄却
原決定が本件異議の申立を棄却したことには、何ら訴訟法違反の点はないから、所論はその前提を欠き採用することができない。(なお、記録によると本件異議の申立は法定の申立期間後に提出されたものであり、これと同時に異議権回復の請求がなされたとは認められないから(刑訴三六三条二項参照)、原決定が控訴趣意書提出の遅延事由につき「やむ…
事件番号: 昭和27(し)90 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】送達報告書により控訴趣意書提出最終日の通知書が適法に送達された事実が認められる場合、通知を受けていないことを前提とする憲法32条違反の主張は採用されない。 第1 事案の概要:申立人は、麻薬取締法違反等被告事件において、控訴趣意書の提出最終日の通知書を受け取っていないと主張し、裁判を受ける権利(憲法…
事件番号: 昭和28(し)20 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の請求が認められるためには、被告人が自ら上訴手続をとり得ない程度の病状等にあることを要し、単なる病状の存在のみでは足りない。 第1 事案の概要:被告人は、上告提起期間内に上告手続をとらなかった。その後、当時の病状により手続が不可能であったとして上訴権回復の請求を申し立てた。原審は、被告人…
事件番号: 昭和48(し)22 / 裁判年月日: 昭和48年6月21日 / 結論: 棄却
特別抗告についての上訴権回復請求を受理した裁判所は、これを棄却する場合には、刑訴法三七五条、四一四条を類推適用して、右請求と同時にされた特別抗告の申立を自ら棄却することができる。