特別抗告についての上訴権回復請求を受理した裁判所は、これを棄却する場合には、刑訴法三七五条、四一四条を類推適用して、右請求と同時にされた特別抗告の申立を自ら棄却することができる。
特別抗告についての上訴権回復請求を棄却する場合と特別抗告棄却の権能
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
判旨
上訴権回復請求を受理した裁判所が、これを棄却する場合には、刑訴法375条、414条を類推適用して、当該請求と同時にされた上訴の申立てを自ら棄却することができる。
問題の所在(論点)
上訴権回復請求を受理した裁判所が、同請求を棄却する場合において、同時に申し立てられた上訴(本件では特別抗告)を自ら棄却することができるか。刑訴法375条、414条の類推適用の可否が問題となる。
規範
刑事訴訟法375条及び414条の規定を類推適用し、上訴権回復請求を棄却する裁判所は、その請求と同時になされた上訴の申立てについても、自ら棄却の決定をすることができる。これは、上訴権の回復が認められない以上、前提となる上訴自体が不適法であることが確定するため、手続の簡素化・迅速化の観点から認められる判断枠組みである。
重要事実
抗告人は、特別抗告の申立てと同時に上訴権回復の請求を行った。原審(上訴権回復請求を受理した裁判所)は、検討の結果、上訴権回復の請求を棄却するとともに、同時に申し立てられていた特別抗告についても自ら棄却する旨の決定を下した。これに対し、抗告人は当該判断に法令違反があるとして抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和48(し)61 / 裁判年月日: 昭和48年9月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告審としてした決定に対しては、刑事訴訟法428条2項および3項の適用はなく、異議の申立てをすることはできない。不適法な異議申立ての棄却決定に対する特別抗告は、実質において事実誤認や単なる法令違反を主張するものである限り、不適法として棄却される。 第1 事案の概要:申立人は、地方裁判所…
あてはめ
本件において、原審は上訴権回復請求を棄却している。この場合、回復の条件が満たされていない以上、同時になされた特別抗告の申立ては期間経過後の不適法なものとして扱わざるを得ない。刑訴法375条(控訴棄却)及び414条(上告棄却)は、申立てが不適法である場合に裁判所が下す決定を定めており、上訴権回復請求が認められない場合にも、その法理を類推適用して当該裁判所が直接上訴を棄却することが手続上相当であると解される。したがって、原審が自ら特別抗告を棄却した手続に違法はない。
結論
上訴権回復請求を棄却する裁判所が、同時にされた特別抗告の申立てを自ら棄却することは正当である。
実務上の射程
上訴権回復手続(刑訴法362条以下)における附随的な手続処理の限界を示す。実務上、回復請求と上訴申立ては同時になされるため(同363条2項)、回復が否定された際の上訴申立ての帰趨について、原審による直接の棄却を認めることで訴訟経済に資する。答案上は、不適法な上訴の排除方法としての類推適用の適否を論じる際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和28(し)10 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利の侵害を主張しても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、刑訴法405条の特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法32条(裁判を受ける権利)の違反を理由として特別抗告を申し立てた事案。しかし、その主張の具体的な内容は、原審の…
事件番号: 昭和28(し)20 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の請求が認められるためには、被告人が自ら上訴手続をとり得ない程度の病状等にあることを要し、単なる病状の存在のみでは足りない。 第1 事案の概要:被告人は、上告提起期間内に上告手続をとらなかった。その後、当時の病状により手続が不可能であったとして上訴権回復の請求を申し立てた。原審は、被告人…
事件番号: 昭和27(し)21 / 裁判年月日: 昭和28年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴棄却決定に対する異議申立期間を徒過した場合であっても、自己等の責に帰すべからざる事由があるときは、上訴権回復の規定を準用して異議権の回復を請求できるが、その請求なしに単になされた異議申立は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は麻薬取締法違反で有罪判決を受け控訴したが、指定された期間内に控訴…
事件番号: 平成18(し)82 / 裁判年月日: 平成18年4月24日 / 結論: 棄却
即時抗告の申立てを受理した裁判所は,刑訴法375条を類推適用してその申立てを自ら棄却することはできない。