即時抗告の申立てを受理した裁判所は,刑訴法375条を類推適用してその申立てを自ら棄却することはできない。
即時抗告の申立てを受理した裁判所が刑訴法375条を類推適用してその申立てを自ら棄却することの可否
刑訴法375条,刑訴法422条,刑訴法423条
判旨
即時抗告の申立てを受けた原裁判所が、刑訴法375条を類推適用して自ら申立てを棄却することはできないが、期間経過が明らかな場合は、当該違法があっても直ちに取り消すべき「著しい正義に反する」事由には当たらない。
問題の所在(論点)
即時抗告の申立てを受けた原裁判所が、刑訴法375条を類推適用して、申立てを自ら棄却することができるか。また、それが許されない場合に、当該棄却決定を維持した判断が「著しく正義に反する」として取り消されるべきか。
規範
1. 刑事訴訟法上、抗告に関しては控訴に関する同法375条に相応する規定がないため、即時抗告を受理した原裁判所が同条を類推適用して自ら申立てを棄却することはできない。 2. もっとも、原裁判所が申立てを棄却したことに法令の解釈適用の誤りがあっても、申立てが期間経過後であることが明らかであり、抗告裁判所でも不適法として棄却を免れない場合には、これを取り消さなければ「著しい正義に反する」(刑訴法411条、434条、426条1項参照)とまでは認められない。
重要事実
1. 申立人は、再審請求棄却決定(平成18年1月12日告知、13日送達)に対し、即時抗告を申し立てたが、申立書が原裁判所に到達したのは期間経過後の同年1月17日であった。 2. 原裁判所(和歌山地裁)は、刑訴法375条を類推適用し、期間経過が明らかであるとして自ら即時抗告を棄却した(原々決定)。 3. 申立人はこれに対し即時抗告したが、原審(大阪高裁)は原々決定を維持して棄却した(原決定)。申立人はさらに特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和39(し)90 / 裁判年月日: 昭和40年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧法下で終結した事件の再審請求に対する高等裁判所の決定については、旧刑訴法及び刑訴応急措置法が適用され、最高裁判所への即時抗告は許されず、憲法違反等の事由がある場合の特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:本件は、旧旧刑訴法の下で公訴が提起され、かつ終結した強盗殺人事件である。これに対する再…
あてはめ
1. 即時抗告の手続において、原裁判所に棄却権限を認める明文規定がない以上、刑訴法375条を類推適用して自ら棄却した原々決定及びこれを維持した原決定には、法令の解釈適用の誤りがある。 2. しかし、本件の即時抗告(原々申立て)は、送達日の1月13日から起算して3日の提起期間を経過した17日に到達しており、期間経過後の不適法な申立てであることは明白である。 3. 抗告裁判所が改めて審理しても不適法棄却を免れない以上、原裁判所が棄却した判断を維持しても、申立人に実質的な不利益はなく、著しく正義に反する事態とはいえない。
結論
原裁判所が刑訴法375条を類推適用して即時抗告を棄却したことは違法であるが、申立ての不適法が明白である以上、原決定を取り消す必要はないとして、特別抗告を棄却する。
実務上の射程
抗告における「原裁判所による棄却権限」を否定しつつ、不適法な申立てを誤って原裁判所が棄却した場合の救済の要否(著しい正義に反するか否か)という二段階の判断枠組みを示す。答案上は、手続違背があっても実質的に結論が妥当であれば、職権による取消事由には当たらないとする構成の参考にできる。
事件番号: 昭和43(し)107 / 裁判年月日: 昭和44年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下で終結した事件の再審請求棄却決定に対し、旧法に基づく即時抗告は許されず、特別抗告としてみても事実誤認の主張のみでは不適法である。 第1 事案の概要:強盗殺人および銃砲等所持禁止令違反の罪で旧刑事訴訟法(大正11年法律第75号)の下に公訴が提起され、終結した事件について、被告人が再審請…
事件番号: 昭和44(し)28 / 裁判年月日: 昭和44年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下で提起された事件の再審請求について、高等裁判所がなした決定に対する即時抗告は認められず、憲法違反を理由とする特別抗告のみが可能である。 第1 事案の概要:窃盗被告事件について旧刑事訴訟法(大正11年法律第75号)の下で公訴が提起され、終結した。その後、当該事件について再審請求がなされ…
事件番号: 昭和58(す)143 / 裁判年月日: 昭和58年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対してなされた特別抗告を棄却した決定については、刑事訴訟法501条にいう「裁判の解釈を求める申立」をすることはできない。 第1 事案の概要:申立人は、再審請求を棄却した決定、及びこれに対する即時抗告を棄却した決定を経てなされた特別抗告棄却決定に対し、刑事訴…
事件番号: 昭和28(し)100 / 裁判年月日: 昭和29年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告審としてした決定に対しては、刑事訴訟法427条により再抗告ができないため、同法428条2項及び3項の異議申立てを認める余地はなく、かかる不適法な申立ては特別抗告の対象となり得ない。 第1 事案の概要:申立人は、大分地裁による再審請求棄却決定に対し即時抗告をしたが、福岡高裁から期間経…