原決定が本件異議の申立を棄却したことには、何ら訴訟法違反の点はないから、所論はその前提を欠き採用することができない。(なお、記録によると本件異議の申立は法定の申立期間後に提出されたものであり、これと同時に異議権回復の請求がなされたとは認められないから(刑訴三六三条二項参照)、原決定が控訴趣意書提出の遅延事由につき「やむを得ない事情に基くもの」と認めなかつたことの当否は兎も角として、本件異議申立を不適法とし、これを棄却したことは結局正当である。
高等裁判所のした控訴棄却の決定に対する、期間経過後の異議申立の適否 ―上訴権回復規定の準用―
刑訴法385条,刑訴法428条,刑訴法426条,刑訴法422条
判旨
控訴趣意書の提出遅延に基づく控訴棄却決定に対する異議申立てにおいて、法定の申立期間を徒過し、かつ異議権回復の請求もなされていない場合には、当該異議申立ては不適法として棄却されるべきである。
問題の所在(論点)
控訴棄却決定に対する異議の申立てが法定期間後になされ、かつ異議権回復の請求も伴わない場合に、当該申立てを不適法として棄却した原決定の正否が問題となる。
規範
刑事訴訟法に基づく異議の申立ては、法定の申立期間内にされることを要し、期間徒過後に申し立てる場合には、同法363条2項(現362条)の準用等により、自己または代理人が責任を負うことができない事由によって期間を徒過したことを疎明して、異議権回復の請求を同時に行わなければならない。
重要事実
抗告人は、控訴趣意書の提出が遅延したことを理由に控訴棄却決定を受けたが、これに対して異議の申立てを行った。しかし、当該異議申立ては法定の申立期間が経過した後に提出されたものであった。また、この申立てに際して、期間徒過を正当化するための異議権回復の請求(刑訴法363条2項参照)も同時になされていなかった。
事件番号: 昭和27(し)21 / 裁判年月日: 昭和28年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴棄却決定に対する異議申立期間を徒過した場合であっても、自己等の責に帰すべからざる事由があるときは、上訴権回復の規定を準用して異議権の回復を請求できるが、その請求なしに単になされた異議申立は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は麻薬取締法違反で有罪判決を受け控訴したが、指定された期間内に控訴…
あてはめ
本件では、記録によれば異議の申立てが法定の申立期間後に提出された事実に争いがない。また、期間徒過を救済するための異議権回復の請求が同時になされたとは認められない。したがって、控訴趣意書提出の遅延に「やむを得ない事情」があったか否かの実体的判断に立ち入るまでもなく、手続上の不備があるといえる。形式的要件を欠く以上、本件異議申立ては不適法と解される。
結論
本件異議申立てを不適法として棄却した原決定は正当であり、特別抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事手続における期間制限の厳格性を示す。控訴棄却に対する救済を求める実務においては、単なる異議申立てのみならず、期間徒過がある場合には必ず権利回復の請求を併せて行うべきであるという手続的遵守事項を再確認させるものである。
事件番号: 昭和29(し)61 / 裁判年月日: 昭和29年11月30日 / 結論: 棄却
抗告人は昭和二九年二月二七日山梨県東八代郡a村bの自宅において同月六日附で東京高裁第一刑事部のした控訴趣意書の所定期日内不提出を理由とする控訴棄却決定の送達を受けたが、これに対する刑訴三八六条二項に基く異議の申立書は同年三月一〇日附で同月一二日に東京高等裁判所に到達しているに過ぎない。右規定による異議の申立には即時抗告…
事件番号: 昭和31(し)46 / 裁判年月日: 昭和31年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法386条1項の規定による控訴棄却決定に対する異議申立ては、即時抗告の規定が準用され、その期間は3日である。期間経過後の不適法な異議申立てについては、自己等の責めに帰することのできない事由がある場合、上訴権回復の手続を併用すべきである。 第1 事案の概要:抗告人は、刑事訴訟法386条1項に…
事件番号: 昭和31(し)44 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法定の申立期限を経過した後の控訴棄却決定に対する異議申立については、刑訴法362条等の上訴権回復請求の規定が準用される。したがって、期限後に異議を申し立てる場合には、所定の期間内に上訴権回復の請求をすると同時に異議の申立をしなければならない。 第1 事案の概要:大阪高等裁判所は、被告人の横領事件に…
事件番号: 昭和42(す)343 / 裁判年月日: 昭和42年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所の上告棄却決定に対する異議申立てにおいて、申立てに理由がない場合、または申立期間を経過した不適法なものである場合は、いずれも棄却される。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、傷害、逮捕、恐喝等の罪に問われ、最高裁判所(昭和41年(あ)第2544号)により上告棄却の決定を受けた。これに対…