判旨
被告人の自白や他人の供述を録取した書面ではない捜索差押調書等は、刑事訴訟法301条の制限を受けず、他の証拠より前に取り調べることが可能である。また、公判調書において証拠調べに対する異議や意見の記載がない場合は、証拠とすることに同意しなかったものと解すべきであるが、刑訴法322条1項の要件を満たせば証拠能力は認められる。
問題の所在(論点)
1. 公判調書に同意の記載がない供述調書を証拠として採用できるか。 2. 自白の端緒に関する記載を含む捜索差押調書等は、刑訴法301条による取調順序の制限を受けるか。
規範
1. 公判調書に証拠使用に関する同意・意見・異議の記載がない場合、被告人側は証拠調べ自体には異議がないが、証拠とすることには同意しなかったものと解する。この場合、当該書面が刑訴法322条1項の要件(任意性等)を満たせば、同意がなくても証拠能力が認められる。 2. 刑訴法301条が「他の証拠が取り調べられた後でなければ請求できない」とする書面は、被告人の自白または自白を内容とする他人の供述を録取した書面(322条、324条1項)に限られる。これに該当しない捜索差押調書や経過報告書は、同条の制限を受けない。
重要事実
第一審において、被告人の供述調書が取り調べられたが、公判調書には同意等の記載がなかった。また、被告人の「自供に基づき」発見した旨や「犯行を認めた」旨の記載がある捜索差押調書および兇器発見の経過報告書について、他の犯罪事実に関する証拠より先に証拠調べが行われた。弁護人は、これらが証拠能力の欠如や予断排除原則(刑訴法301条)に抵触すると主張して上告した。
あてはめ
1. 公判調書に同意の記載がない以上、同意はないものと解すべきだが、第一審は当該調書が322条1項の要件を具備すると判断して証拠採用しており、内容を検討しても任意性や特信性を否定すべき理由はなく、適法である。 2. 本件の捜索差押調書および経過報告書は、被告人の自白そのものを録取した書面ではないため、刑訴法301条の対象外である。また、当該書面には犯罪の日時・場所等の具体的記載もなく、裁判官に不当な予断を生じさせたともいえない。
結論
被告人の供述調書は322条1項により証拠能力が認められ、捜索差押調書等の取調順序も刑訴法301条に違反しない。したがって、原判決に違法はなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和29(あ)3718 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】伝聞例外(刑訴法321条1項各号等)における「特に信用すべき状況」の有無は、供述時の外部的事情や供述内容自体等の諸般の事情に基づき、事実審裁判所が判断すべき裁量事項である。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を理由として上告したが、その実質的な内容は、原判決における伝聞証拠の証拠能力判断(特信状況…
実務上の射程
自白調書の証拠能力取得プロセス(同意がない場合の322条による代替)および、刑訴法301条の対象範囲を画定する際の基礎となる判例である。特に「自白を録取した書面」の意義を厳格に解する実務運用を支える。答案上は、証拠調べの順序が問題となる場面で、当該書面の性格を322条等と対比して論じる際に引用する。
事件番号: 昭和27(あ)3790 / 裁判年月日: 昭和28年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白のみを証拠として有罪とすることは憲法38条3項に抵触するが、被害者の盗難届等の自白以外の証拠が併存する場合には補強証拠が存在するものとして、同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは窃盗等の罪に問われ、第一審において有罪判決を受けた。被告人らは自白をしていたが、弁護人は当該判決が…
事件番号: 昭和27(あ)3578 / 裁判年月日: 昭和28年11月30日 / 結論: 棄却
捜索差押調書は捜索差押許可状と共に提出しなければ証拠能力を欠くということはない。