判旨
被告人の供述調書が証拠として採用されるためには、任意性に欠けるところがなく、かつ真実性があることが必要である。また、拷問等の不当な手段によりなされた疑いがないことも、証拠能力を認める前提となる。
問題の所在(論点)
捜査機関(司法警察員・検察官)が作成した被告人の供述調書について、拷問等の有無や任意性の判断基準が、証拠能力の要件としていかにあるべきかが問題となった。
規範
供述調書の証拠能力(刑事訴訟法322条1項等)が認められるためには、当該供述が任意になされたものであること(任意性)、および内容が信用できること(真実性)を要する。特に、拷問、強制、脅迫その他の方法によりなされた疑いがある場合には、証拠とすることができない。
重要事実
被告人AおよびBは刑事事件で起訴され、第一審において捜査段階(司法警察員および検察官)の供述調書が証拠として採用された。被告人Aについては、当時の経済状況に関する供述調書が、被告人本人および弁護人の同意を得て証拠採用されていた。被告人Bについては、録音盤を含む供述調書が証拠採用されたが、被告人側はこれらが拷問等により任意性を欠くものであるとして上告した。
あてはめ
被告人Aに関しては、第一審公判において被告人と弁護人が証拠とすることに同意(刑訴法326条)しており、かつ記録上、拷問等によりなされたと認めるに足りる資料は存在しない。被告人Bに関しても、原審が認定した「司法警察員および検察官に対する各供述調書(録音を含む)に任意性を欠くところはなく真実性がある」との判断は、記録に照らして相当といえる。
結論
被告人両名の各供述調書には任意性および真実性が認められ、証拠採用に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
伝聞例外としての被告人の供述(刑訴法322条1項)や証拠同意(326条)の場面において、任意性の調査が必須であることを示す。実務上、拷問等の外形的・客観的事実の有無を記録から慎重に判断する際の基準として活用される。
事件番号: 昭和31(あ)4204 / 裁判年月日: 昭和33年6月13日 / 結論: 破棄差戻
第一審判決が被告人の司法警察員に対する供述(自白)調書を他の証拠と綜合して犯罪事実を認定し、原判決もまたその自白の任意性を認め、第一審判決の右採証を是認している場合、諸般の証拠上、右自白の任意性に疑いがあるとみるのが相当で(判文参照)、且つ同自白が犯罪事実認定の有力な証拠となつていると認めるときは、刑訴第四一一条第一号…