司法警察員が作成した被告人の供述調書は、それがかりに不法逮捕拘禁中に作成されたものであつてもその一事をもつて、ただちに無効と解すべきではない。
不正逮捕拘禁中司法警察員の作成した被告人の供述調書の証拠能力
刑訴法319条1項,刑訴法322条1項,憲法33条,憲法34条,憲法38条1項,憲法38条2項
判旨
不法な逮捕・拘禁中に作成された自白調書であっても、そのことのみをもって直ちに証拠能力が否定されるわけではなく、任意性が認められる限り証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
不法な逮捕・拘禁という違法な身体拘束の状態下で得られた自白調書について、その一事をもって証拠能力が否定されるか。また、任意性の抗弁がない場合の取り扱いはどうあるべきか。
規範
不法な逮捕・拘禁中に作成された供述調書であっても、その一事をもって直ちに違法な証拠として排除されるものではない。憲法38条2項及び刑訴法319条1項の趣旨に照らし、当該供述が任意になされたものであると認められる場合には、証拠能力が肯定される。
重要事実
被告人Aは、司法警察員に対して3回にわたる供述調書を作成された。第1審の公判段階において、弁護人はこれらの調書の証拠調べに対して異議を述べず、被告人本人もこれを争わなかった。また、被告人側からは供述の任意性についての抗弁もなされていなかった。しかし、上告審において、当該調書は不法な逮捕・拘禁中に作成されたものであるから違法であると主張した。
あてはめ
本件では、被告人および弁護人は、第1審の公判において供述調書の証拠調べに同意し、その内容を争っていない。さらに、供述が強制されたものであるといった任意性を疑わせる具体的な抗弁も提出されていない。たとえ弁護人が主張するように、調書作成の前提となる逮捕・拘禁に不法な点があったとしても、任意性が否定されない限り、その不法の一事をもって直ちに調書の証拠能力を否定することはできないと解される。
結論
本件各供述調書の証拠能力は認められ、不法逮捕・拘禁を理由に違法を主張する論旨は採用できない。上告棄却。
実務上の射程
自白の証拠能力(任意性)に関する初期の判例であり、違法収集証拠排除法則が確立する前の判断枠組みを示している。現在の実務では、先行する手続の違法が重大であり、証拠排除が将来の違法捜査抑制のために必要であれば排除される可能性があるが、本判決は「不法拘禁=直ちに自白排除」という自動的な排除を否定する文脈で参照されうる。
事件番号: 昭和26(れ)1162 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白の任意性に疑いがない場合において、当該自白が証拠として採用され、かつ、それが唯一の証拠でないときは、自白の証拠能力および証明力に関する憲法および刑訴法の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の供述調書について、弁護人は任意性を欠くものであると主張して上告した。また、当該自白が唯一…
事件番号: 昭和28(あ)287 / 裁判年月日: 昭和28年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の司法警察員に対する供述調書について、記録を精査してもその任意性を疑わしめる形跡が認められない場合には、証拠能力を肯定し、これに基づく有罪判決を維持することができる。 第1 事案の概要:被告人は、司法警察員に対して行った供述を録取した調書について、任意性を欠くため証拠能力がなく、これを用いた…